2006 Fiscal Year Annual Research Report
消化管腫瘍形成におけるmTORシグナルの役割の解明及び阻害剤を用いた治療
Project/Area Number |
06J02722
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤下 晃章 京都大学, 医学研究科, 特別研究員DC2
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Keywords | mTORシグナル / 消化管腫瘍 / Wntシグナル / 血管新生 / 家族性大腸ポリープ症 / ApcΔ716マウス |
Research Abstract |
消化管腫瘍形成におけるmTORシグナルの役割を検討するために、ヒト家族性大腸ポリープ症のモデル動物であるApcΔ716ノックアウトマウスやmTOR阻害剤を用いて、以下の2点に重点を置き解析を行った。 1)Wntシグナルの活性化によるmTORシグナル活性化の誘導機序の解析 正常腸管粘膜とポリープにおけるmTORシグナルの活性比較した結果、正常部に比べポリープでmTORシグナルの活性が顕著に増大していた。またポリープでmTORシグナルが活性化している殆どが腫瘍上皮細胞であった。続いてこのマウスのポリープ形成はWntシグナルの活性化によって引き起こされていることから、大腸癌細胞株等を用いてWntシグナルとmTORシグナルの関係について検討したところ、mTORシグナルの活性化はWntシグナルの活性化に依存することを確認した。 2)mTOR阻害剤による腫瘍形成抑制機序の解明 mTOR阻害剤をApcΔ716ノックアウトマウスに投与したところ大きなサイズのポリープ(1.5mm以上)が顕著に減少していたことから、mTORシグナルの活性化は「発生」よりも「進展」に重要である事を示唆した。また腫瘍上皮細胞の増殖及びアポトーシスを阻害剤投与群と対照群で比較したところ、アポトーシスの頻度は各群で差は認められなかったが、増殖細胞数が阻害剤投与群で有意に減少していた。またポリープでサイクリンE及びAの発現が阻害剤投与群で有意に減少していた。阻害剤による腫瘍形成抑制はこれら細胞周期に関わるタンパクの発現を低下させ、細胞増殖を抑制している事を示唆した。一方ポリープでの血管新生も阻害剤投与群で減少していたことから、阻害剤による腫瘍形成抑制は上皮だけでなく間質、特に血管に対しても作用していることが示唆された。
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