2007 Fiscal Year Annual Research Report
ヒーローの文化的境界線-第二次世界大戦後におけるファンタジーの日米中比較研究
Project/Area Number |
06J02925
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
孫 郁ぶん Kyoto University, 大学院・人間・環境学研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | ヒーロー / マンガ / コミック / 台湾漫画 / 戦後文化 |
Research Abstract |
今年度の前半は、引き続きアメリカでのフィールドワークを行った。ハーバード大学のアダム・カーン教授およびその学生たちの協力のもとで、アメリカ人の目に映る日本マンガのあり方を検討した。また、MITのイアン・コンドリー教授が主催した「クール・ジャパン」というプロジェクトに参加し、各国からの研究者と日本のマンガ・映画・芸術などビジュアル・カルチャーについて意見を交換した。学術的な交流を行う一方、公立図書館や、大学のサークルや、日本のマンガ・視覚媒体を取り扱う業者等から話しを聴取し、日本文化の受容の実態に関してより具体的に理解することができた。その後、アジア系移民が多く、日本文化の受容が東部より深化している西海岸に調査の場を移し、UCLAを訪問した。広大なアメリカにおける地域文化の差異を考慮に入れ、アメリカン・コミックと日本マンガの相互関係を考察した。 今年度の後半では、これまでの理論分析とフィールドワークの成果を踏まえて、研究論文をまとめた。これまでの先行研究では、マンガを各国の特有文化として捉える傾向が強く、戦後の環太平洋地域における活発な越境的マンガ交流について、あまり論じられてこなかった。本研究では、戦後から70年代初頭までの日本、アメリカ、台湾のマンガを取り上げて、戦後という歴史文化の文脈の下で、マンガ作品はどのように外国の影響を受けながら、自国社会状況に適応してローカライズしてきたかを明らかにした。マンガのヒーローは、自国文化固有の価値観や美意識と異文化圏からの視覚記号の組み合わせであり、観客にそれぞれ解読され、多様な意味を生成する。同じ記号からは多様な意味が紡ぎだされ、同じヒーローという概念も異文化の記号に混ぜられて組み立てられる。日本、アメリカ、台湾の戦後マンガのヒーロー描写に使用された混成的な視覚言語を通し、そのような異文化交流の軌跡およびそのプロセスを検証した。
|
Research Products
(3 results)