2006 Fiscal Year Annual Research Report
ポスト・ソビエト期の社会的ネットワーク再構築とイスラーム実践-カザフを事例に
Project/Area Number |
06J02938
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤本 透子 京都大学, 大学院人間・環境学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | カザフスタン / ポスト・ソビエト / 文化人類学的研究 / 社会的ネットワーク / イスラーム社会 / 祖先 / 土地 / 世帯戦略 |
Research Abstract |
旧ソ連領中央アジアのカザフスタンを対象として、ポスト・ソビエト期の社会変容の特質に関する文化人類学的研究を行った。特に、社会的ネットワーク再構築とイスラーム実践に着目し、文献調査とカザフスタン北部農村における50日間のフィールド調査を行った。その成果として、学会で3回発表し、論文1本を執筆した(査読後修正中)。 論文「祖先へのクルアーン朗唱の意味-ポスト・ソビエト期カザフスタン北部農村を事例として-」では、(1)カザフスタン独立前後から、村人によるアイデンティティの探求として父系の系譜を辿る行為が盛んにみられること、(2)祖先へのクルアーン朗唱が村落部のカザフ人にとってイスラーム実践の要であり、殊に近年は活性化していることを明らかにした。2007年2月に国立民族学博物館共同研究会で行った口頭発表「カザフスタン北部農村におけるアス(as)の歴史的展開」では、大規模な死者供養「アス」の復興に焦点をあて、19世紀に有力者の1年忌として行われたアスが、ソ連時代には反宗教政策の影響から衰退したが、ポスト・ソビエト期に地元出身者の記念祭として復興したことを指摘した。 2006年7月に日本アルタイ学会で口頭発表した「ポスト・ソビエト期における牧畜の民営化と世帯戦略」では、社会主義に基づき村の生活を支えていたソフホーズが解散した後、村人たちが民営化にいかなる世帯戦略を用いて対処したかを、放牧と干草づくりにみられるネットワークから明らかにした。 2007年3月、日本中央アジア学会における口頭発表「民営化後の土地借用と『祖先の土地』」では、(1)土地関係の歴史的変遷(カザフ遊牧民の土地関係、農業集団化と定住村落の形成、ソフホーズ時代の牧畜と牧夫の移動)、(2)民営化後の国家からの土地借用にみられるソフホーズ時代からの連続性と非連続性、(3)「祖先の土地」の伝承と土地借用の関連性について明らかにした。
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