2007 Fiscal Year Annual Research Report
ポスト・ソビエト期の社会的ネットワーク再構築とイスラーム実践-カザフを事例に
Project/Area Number |
06J02938
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤本 透子 Kyoto University, 大学院・人間・環境学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | カザフスタン / ポスト・ソビエト / 文化人類学 / イスラーム実践 / 祖先 / 系譜 / 死者供養 / 土地 |
Research Abstract |
旧ソ連領中央アジアのカザフスタンを対象に、ポスト・ソビエト時代の社会変容の特質に関する文化人類学的研究を行った。特に「イスラーム復興」下でのカザフ人の祖先をめぐる宗教実践と、民営化が進む中での「祖先の土地」の認識のあり方に着目し、以下の研究成果を挙げた。論文「ポスト・ソビエト時代の死者供養」では、イスラームの犠牲祭の活性化をとりあげ、カザフ人にとって犠牲祭が本来の目的から離れて、死者供養のために行われていることを指摘した。また、祖先の霊魂というアニミズム的概念がイスラームの枠組みによって語られ、死者供養によってカザフ人の社会生活に重要な役割を果たす父系の系譜が伝統とはやや異なる形で再認識されていることを明らかにした。論文「ポスト・ソビエト時代における大規模な供養アスの展開」(国立民族学博物館調査報告、2008年7月刊行予定)では、ソ連成立以前にカザフ人有力者の1年忌として行われていた大規模な供養が、1990年代後半に村人の生誕100年祭や集団化以前の古い墓地への墓碑建設に伴って復興したことに焦点をあてた。ポスト・ソビエト時代におけるアスの復興は、村人たちにとって互いの系譜関係を再認識し、カザフ人として地域史・民族史を再考する行為となっている。この研究結果については国際文化人類学・民族学会でも2008年7月に発表予定であり、アブストラクトが受理されている。さらに、論文「民営化後の土地借用と『祖先の土地』」と文化入類学会における学会発表では、祖先をめぐる宗教実践が「祖先の土地」の認識とも結びついていることを指摘し、ポスト・ソビエト時代における民営化プロセスの中で「祖先の土地」が村人たちにとってもつ意味を論じた。
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Research Products
(3 results)