2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06J02941
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
安原 和也 Kyoto University, 大学院・人間・環境学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 概念ブレンディング理論 / 照応 / 融合指示 / メンタル・スペース理論 / 参照点モデル / 認知言語学 / 文脈指示 / 意味構築 |
Research Abstract |
昨年度に引き続き、今年度も、広い意味での言語現象に焦点を充てながら、Fauconnier & Turnerによって提唱された「概念ブレンディング理論」の更なる収束証拠の探求を試みた。特に、今年度は、昨年度提示した「融合指示」の照応現象が、英語の照応現象全体においてどのように位置づけられるのかという探求課題を設定し、認知言語学(あるいは認知意味論)の理論的枠組みの中でその探求を試みた。具体的には、英語学とその関連分野で発表された学術論文や学術文献で紹介される英語の具体的な名詞類照応の事実を網羅的に整理・把握するとともに、それらの背景に存在する認知メカニズムを特定する中で、認知言語学における統一的な照応解釈理論としての「文脈指示の照応論」の構築を試みた。一般に、これまでの認知言語学における照応研究は、(i)情報分割を得意とするメンタル・スペース理論に基づく照応論、(ii)文脈喚起と指示探索を得意とする参照点モデルに基づく照応論、そして、(iii)[本研究が焦点化してきた]融合指示の関係を取り扱う概念ブレンディング理論に基づく照応論の、大きく分けて3つの方向性が提示されてきたと言える。しかし、これらの照応論は各々が独立に提示されてきた都合上、各々の照応論間の繋がりが不明確なままであり、また全ての照応論を包括する統一的な照応論の構築に向けての方向性も未だ開拓されるに至っていないのが現状である。このような状況に対して、本研究で提示した「文脈指示の照応論」は、認知言語学の学術領域において、上記の3つの照応理論を包括できる、経験的にも認知的にもより自然な照応解釈理論として提案することができる。加えて、昨年度に引き続き、概念ブレンディング理論について議論した学術文献を国内外から収集することで、概念ブレンディング理論の収束証拠をより包括的に整理することにも努めた。
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Research Products
(5 results)