2006 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトの運動制御における動的な身体の状態推定機構の解明
Project/Area Number |
06J02964
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小川 健二 京都大学, 情報学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 運動制御 / 核磁気共鳴画像法 / 状態推定 / 後部頭頂皮質 / 視覚フィードバック |
Research Abstract |
本研究は,ヒトの巧みで正確な運動制御を実現する脳内の状態推定機構の解明を行った.ヒトが脳で生成した運動指令を末梢の効果器(身体)へと伝える遠心性経路,また効果器あるいは外界の状態を感覚情報として中枢へと伝える求心性経路には,遅延やノイズといった生体固有の制約があるため,それを補償する予測的制御が必要である.さらには実際の運動によって得られる感覚フィードバック情報を利用して,内的予測を適切に修正する必要がある.このような内的予測と感覚フィードバック情報とを動的に統合して身体の状態予測制御を実現する脳内メカニズムについて,本研究は機能的核磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて検討した.実験では,視覚呈示された曲線のトレーシング運動((1)),またはターゲットのトラッキング運動((2))を行い,視覚フィードバックに遮断と呈示という操作を加え,その際の実験協力者の行動データ,および脳活動を分析した.主な研究成果は下記の2点である. (1)視覚フィードバック呈示後の視空間的な運動誤差と右頭頂間溝の活動に正の相関が見られ,この部位がオンラインの視覚フィードバックに基づく誤差評価に関連する点が明らかとなった.さらに視覚フィードバック遮断中の運動パフォーマンスと前補足運動野の活動に正の相関が見られ,この部位が視覚情報が得られない際の内的な視覚運動イメージ化に関わる点が示唆された. (2)自己運動と外部運動に共通して視覚遮断中に前補足運動野の活動が見られ,この部位が遮断対象の動作主に関わらない視覚運動イメージ化に関連することが示唆された.また自己運動,および外部運動の視覚フィードバック遮断中には,それぞれ左下頭頂小葉と右上/下頭頂小葉の活動が見られた.この結果から,視覚遮断に対する内的推定過程において,自己運動と外部運動とでは頭頂葉の側性が存在する点を明らかにした.
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Research Products
(3 results)