2006 Fiscal Year Annual Research Report
微生物酵素と化学合成を組み合わせたウィルス感染阻害剤の創製とその応用
Project/Area Number |
06J02997
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
森本 舞子 (梅村 舞子) 京都大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 微生物酵素 / インフルエンザウイルス / 感染阻害剤 / sialyltransferase / 多価効果 |
Research Abstract |
微生物Mucor hiemalisより単離された酵素endo-β-N-acetylglucosaminidaseの糖転移活性を利用して、インフルエンザウイルスの新規な捕捉型感染阻害剤の創製を進めた。インフルエンザウイルスに特異的に認識されるシアル酸を含有した複合糖鎖をキトサンポリマーに複数付加した感染阻害剤の阻害効果をみるため、4種類のインフルエンザウイルス(A/New Caledonia(HIN1),A/Panama(H3N2),A/Hyogo/73(HIN1),A/PR8(HIN1))に対して感染阻害実験を行った。その結果、4種類全てのウイルスに対して感染阻害効果を確認した。特にHIN1型に対する阻害効果が高く、コントロールであるFetuinの約100分の1以下の濃度で同等の阻害効果を示した。さらにキトサンのグルコサミン残基に対するシアロ糖鎖の置換率を5%から40%まで変えて同様に感染阻害効果をみたところ、置換率と比例相関がみられた。したがってこの感染阻害剤の効果は、リガンドであるシアロ糖鎖がインフルエンザウイルスを捕捉することによるものであることが確認された。次いでウイルスを捕捉し感染を妨げるのに十分なキトサンの長さ(重合度)を見積もるため、5種類の重合度のキトサン(DP(平均)=20,200,400,590,680)でこの阻害剤を合成し、同様にウイルス感染阻害実験を行った。その結果、平均重合度が200から590のものは同濃度においてほぼ同等の感染阻害効果をもったが、それらに比べて重合度680のものでは、阻害剤の濃度が3〜62.5μg/mLの範囲でそれぞれ約2倍の感染阻害効果を示した。重合度20のものは〜62.5μg/m工まで阻害効果を持たなかった。以上より、この感染阻害剤の作成にあたり重合度の高いキトサンを使用する方が同等の効果的であることが示唆された。
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