2007 Fiscal Year Annual Research Report
微生物酵素と化学合成を組み合わせたウイルス感染阻害剤の創製とその応用
Project/Area Number |
06J02997
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
森本 舞子 (梅村 舞子) Kyoto University, 生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 微生物酵素 / インフルエンザウイルス / 感染阻害剤 / 多価効果 |
Research Abstract |
微生物Mucor hiemalisより単離された酵素endo-β-N-acetylglucosaminidaseの糖転移活性を利用して創製された、新規なインフルエンザウイルス捕捉型感染阻害剤CDOキトサンの機能解析を進めた。本阻害剤はインフルエンザウイルスのタンパク質であるヘマグルチニンに特異的に認識されるα2,6シアリルラクトサミンを含有する複合糖鎖をキトサンポリマーに複数付加したものであり、昨年度中にその高い阻害効果が確認されている。本年度は、本阻害剤のバックボーンであるキトサンの長さおよびシアロ糖鎖の付加率(DS)が感染阻害効果に与える影響を正確に見積もるため、5種類の長さの異なるキトサンを用いて、各々に対してDS値の異なる同阻害剤を作成し、その感染阻害効果をみた。DS値はNMR分析により同定した。結果、キトサンの長さはウイルス直径の2〜3倍以上である必要のあることが明らかとなった。またDS値が15%以上になると、効果はプラトーに達し一定の値をとった。DS値が15%のとき、キトサンバックポーンに付加されたシアロ糖鎖問の距離は平均しておよそ4nmとなる。一方、ヘマグルチニンは三量体であるが、その各々のシアル酸結合ポケット間の距離もまたおよそ4nmである。したがって、DS値が15%以上になると効果が一定となるのは、ヘマグルチニンの構造と一致したリーズナブルな結果であるといえる。すなわち本阻害剤は、シアル酸とヘマグルチニンの相互作用を介してインフルエンザウイルスに接着し、さらに余剰部分がキトサンの比較的剛直な性質ゆえにウイルスの周辺に棒状に伸びることによって、ウイルスの細胞への接近が阻害されていると考えられる。この考察は、分子動力学計算等を用いて作成したCDOキトサンとヘマグルチニンの分子モデルからも裏付けられた。
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Research Products
(1 results)