2006 Fiscal Year Annual Research Report
エドムント・フッサールにおける前期・中期・後期「時間論」の統一的視点からの解明
Project/Area Number |
06J03005
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
江口 建 京都大学, 地球環境学堂, 特別研究員(DC2)
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Keywords | フッサール / 現象学 / 時間論 / 純粋自我 / 原-自我 / 『ベルナウ草稿』 / 『イデーンII』 / 生き生きした現在 |
Research Abstract |
20世紀ドイツにおける現象学の創始者エドムント・フッサールが残した「時間意識の謎」を巡る問題群を統一的視点から解明するという目的のもと、研究遂行者は主に中期時間論の代表作とされる1917/18年の『ベルナウ草稿』(2001年刊)の解読に取り組むことを課題としてきた。研究目的に鑑み、まずフッサール研究者の間でも依然として見解が錯綜している「時間」と「自我」の関係を巡る問題に集中的に取り組んだ。取り組みの発端として、フッサール自我論の最初の詳しい考察である『イデーンII』と『ベルナウ草稿』とを突き合わせ、一度は『イデーンII』で「時間的に構成された統一体」として承認された純粋自我が、何故に『ベルナウ草稿』において「無時間的-超時間的」な《作動する自我》として捉え直されるに至ったのか、その思考の経緯を探り、その成果を2006年6月に『アルケー』(関西哲学会編)第14号に発表した。その際、フッサールの記述において、自我の「時間的構成」と「原初的発生」の問題が混在している可能性もまた明らかになった。その洞察を基に、『ベルナウ草稿』における「原-自我」の思索が、晩年の「生き生きした現在」の理論、更には最晩年にフッサールが密かに構想した《現象学の現象学》の境地に辿り着く内在的可能性を、2006年に刊行されたばかりの『C草稿』やその他の晩年の諸草稿をも視野に含めつつ根底から探り、その研究成果を現象学国際雑誌Interdisziplinare Phanomenologie第4号に掲載すべく論文にまとめ、また、2007年3月に行われた第6回フッサール研究会にて口頭発表した。 それと並行して、フッサールにとって「時間」や「自我」と並ぶ重要な主題の一つである「身体」の問題にも取り組み、上掲のInterdisziplinare Phanomenologie第3号に公表したことも、ここに併せて報告しておく。
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Research Products
(5 results)