2006 Fiscal Year Annual Research Report
植物繊維のナノファイバー化とエレクトロニクスデバイス用透明ナノ複合材料の開発
Project/Area Number |
06J03053
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岩本 伸一朗 京都大学, 生存圏研究所, 特別研究員(DC2)
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Keywords | セルロース / ナノファイバー / ナノコンポジット / 透明材料 |
Research Abstract |
グラインダー(石臼式磨砕機)を用いた、植物繊維のナノファイバー化メカニズムの解明に取り組んだ。セルロースナノファイバーの集合体である植物繊維は、グラインダーにより機械的にナノファイバー化される。このナノファイバーを抄紙しシートを作成し、透明樹脂を含浸することにより低熱膨張、高弾性、フレキシブルな透明複合材料が得られる。この材料はエレクトロニクスデバイスへの応用が期待されるが、精密な加工特性が要求されるため、ナノファイバー化メカニズムを解明し、材料物性との関係を明確にする必要がある。 植物繊維にはセルロース純度の高い溶解パルプを用い、グラインダー処理を行い処理回数ごとによるパルプの形態と、複合材料の透明性、機械的、熱膨張特性を検討した。5回処理までは溶解パルプは均一にナノ化され、複合材料の透明性は向上するが、それ以上の処理では形態はほとんど変化なく、複合材料の透明性の向上はわずかであった。複合材料の機械的特性については、ヤング率、強度、破壊ひずみ共に、処理回数の増加に従い低下し、線熱膨張係数は処理回数の増加に従い増加した。この結果、グラインダー処理の一定回数以上の繰り返しは、ナノファイバー化への寄与はほとんどないのにも関わらず、複合材料の機械的特性の低下や線熱膨張係数の増加を引き起こすため、グラインダー処理には最適な処理回数が存在することが明らかになった。複合材料のこれらの物性変化は、グラインダー処理による繊維のセルロース結晶化度、重合度の低下が原因と考えられ、特に線熱膨張係数とセルロース結晶化度には明確な負の相関が見られた。さらに、これらの知見を基に、硫酸処理により繊維の非晶部分を除去し繊維の結晶性を向上させ、透明複合材料の低熱膨張化に成功した。 これらの成果は、木材学会年次大会(秋田)ナノ学会年次大会(京都)繊維学会年次大会(東京)にて研究報告を行った。
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