2006 Fiscal Year Annual Research Report
大気環境暴露によるSiC繊維のナノ構造変化とその強度に及ぼす影響の解明
Project/Area Number |
06J03124
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
森下 浩平 京都大学, 国際融合創造センター, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 高温大気暴露劣化 / 炭化ケイ素繊維 / 破壊じん性 / 破壊メカニズム / 集束イオンビーム |
Research Abstract |
SiC/SiC複合材の強化繊維として現在最も実用化が期待されているTyranno-SA(結晶質)およびZMI(非晶質)線維について1873Kまでの高温大気暴露を施し,力学試験・組織観察・X線回折実験および集束イオンビーム導入ノッチを用いた新規破壊じん性評価試験により,繊維劣化メカニズムの解明を試みた.主な結果は以下のとおりである. 非晶質繊維においては表面の酸化膜き裂からの進展および酸化膜形成に伴う表面形状の乱れ,欠陥形成が劣化の原因であり,1773Kより高温での大気暴露ではβ-SiC結晶子の粗大化に起因するじん性の低下がさらに強度を下げることを明らかにした(Materials Transactions, Vol.48 [2] pp.111-116(2007)).特に結晶子の粗大化と破壊じん性の低下を定量的に関連付けられたことは大きな成果である.一方で結晶質繊維においては高温大気暴露による酸化過程において繊維表面にボイドが形成される.このボイドは作製過程でβ-SiC結晶粒の粒界三重点に残存してしまう余剰炭素の優先酸化が原因であり,より高温での大気暴露によりその数が,より長時間での暴露によりそのサイズが増大することを定量的に明らかとした.また,形成酸化膜の有無に依らず強度が低下すること,および得られた破壊じん性から,これらボイドが負荷応力下で連結し,臨界に達した時点で繊維を破壊するというメカニズムを示した. 以上のように実用高温環境下において結晶質繊維が非晶質繊維より高強度である原因は,結晶質繊維の破壊じん性および弾性率が非晶質繊維よりも高いために酸化膜き裂の影響がより高応力で現れ,両者で破壊のメカニズムが異なることであることを明らかにした.これらは,重要な基礎的知見である.
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Research Products
(1 results)