2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06J03142
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
北島 義和 Kyoto University, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | アクセス権 / コモンズ / 環境社会学 / 国際情報交換 / アイルランド |
Research Abstract |
今年度は昨年度に引き続いて、アイルランド農村における私有地・共有地での公衆アクセスをめぐる、データの収集につとめた。年度前半は、アイルランドの主要なレクリエーション諸地域においてそのアクセス管理の傾向を探った。その結果、土地所有者・共有者(主に農民)以外の人々による土地へのアクセスは、極めてローカルで私的な人間関係を媒介にして管理されており、それは地元民による利用のみならず、アクセスをより広く公衆に開く場合にも同様であることを発見した。そして、そこでは地元のレクリエーションクラブが主要な役割を果たすことも判明した。しかし、ウォーキングのような、地域外からのアクセス者が多い場合には撹乱的要素が強く、それはしばしば対立的状況も生み出してきた。したがって年度後半より、このようなウォーキングによる公衆アクセスをめぐる問題が顕著になっている、スライゴーおよびりートリム県北部の丘陵地帯において、アクセスをめぐるミクロな社会的状況について集中的に調査した。その結果見えてきたのは、外部からの撹乱的要素の下で、個別ケースごとに当該所有者および地元レクリエーション者の間で、私的なもの・地域的なもの・公的な(あるいは法的な)ものについての境界線が絶えず交渉・形成されていく過程であり、それと政府や全国団体による固定的なアクセス政策・要求とのずれである。その一方で、国レベル・地域レベル共に、私的な社会関係に重きをおいた環境管理が重視されており、それを縛るものとして公あるいは法の概念が語られるということも発見した。これがアイルランドにおける「アクセスの権利」という法的概念の背景と思われ、同じようにインフォーマルな状況をベースにしているものの、ムラ組織などの集合的な場を中心に環境管理を行ってきた日本との差異であるといえよう。今後はこの調査により得た知見を幅広く公表していく予定である。
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