2007 Fiscal Year Annual Research Report
アルベルトゥス・マグヌスにおける知性論と幸福概念の関係について
Project/Area Number |
06J03149
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
横田 蔵人 Kyoto University, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 心の哲学 / 志向性 / De anima / 存在論 / オッカム / アウレオリ / スコトゥス学派 / 心と言語 |
Research Abstract |
昨年度に引き続き、中世知性論の基本構造を特に「知性のうちなる存在」という問題を中心に検討した。 昨年度の研究においては13世紀におけるアヴェロエス受容がもたらした当該問題の生成過程を確認することができたが、本年度は当該問題の全体像を把握するために14世紀における問題の深化を調査した。中世におけるイスラム哲学流入の結果、「心」の認識プロセスについてのより詳細なモデル化への道が開かれたことは昨年度報告において述べたとおりであるが、本年度の研究によって次のことが明らかになった。すなわち、このモデル化の結果、中世哲学において西欧哲学史上初めて、心の作用・機能という側面と、当該作用の対象・所与として心に提示される物という側面との間の、精緻な区別が行われた事、すなわち、今日「志向性」と呼ばれる問題が「誕生」したという事である。 研究成果は「フィクトゥム再考-オッカムの初期概念論について」論文(『中世哲学研究』)において公開され、また「錯覚と志向性の存在論 オッカムによるアウレオリ批判をめぐって」論文(『中世思想研究』)において公開予定(査読中)である。これらは唯名論者オッカムを資料にして研究課題となっている問題への応答を検討し、問題の連続と展開を確認したものである。 また、上記の研究と平行して、サールやチザムといった現代哲学者のテクストの調査を進めた結果、中世哲学と、現代英米哲学において活発な議論を呼んでいる志向性の問題との間に、深い親近性があることが確認された。
|
Research Products
(3 results)