Research Abstract |
比喩表現(例:人生はギャンブルだ)の理解の過程について,特定の意味(例:どうなるかわからない)で比喩が理解される状況に限定し,どのような要因から比喩が理解されるのかを検討する研究を行った. 具体的には比喩72文に対して,比喩の理解容易性や,主題及び喩辞における特定の意味の重要度,主題と喩辞の単語としての類似性や特定の意味を基準にした場合の類似性,喩辞の特定の意味での慣習性,特定の意味での喩辞の適切性,表現の親しみやすさなどの指標を質問紙調査により収集し,指標間相関を分析することで検討した.その結果,比喩の理解容易性,および特定の意味での喩辞の適切性は,喩辞における特定の意味の重要度と強い正の相関関係にあることがわかった.また,それだけでなく,主題と喩辞の単語としての類似性,特定の意味を基準にした場合の類似性も,比喩の理解容易性や適切性を予測する要因となりうることがわっかた. これらの結果を元に,比喩理解において,主題及び喩辞が比喩と関連する特定の意味を,どの程度活性化させているかを検討する実験を行った.具体的には,表現の適切さと比喩におけるたとえる語の慣習性という観点から,比喩文をプライム刺激,比喩の主題及び喩辞を主語(例:人生,又はギャンブル),比喩と関連する特定の意味を述語(例:どうなるかわからない)とした,有意味性判断課題を用いた実験を行った.その結果,喩辞において比喩的な意味が活性化しているのは,喩辞が特定の意味で慣習的に使われているという条件が成立した上で,かつた主題との組合せから喩辞が適切に用いられているときに限定されることが明らかとなった.また比喩として意味の通りにくい条件(適切さが低い,喩辞の慣習性が低い)がそろえば,主題の比喩的な意味が活性化される傾向にあることが示された.
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