2007 Fiscal Year Annual Research Report
多文化主義的時代における、正義論と国民国家の役割に関する、哲学的探究
Project/Area Number |
06J03164
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川瀬 貴之 Kyoto University, 法学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 法哲学 / リベラルナショナリズム / ナショナリズム / 多文化主義 |
Research Abstract |
本年度は、一本目の論文である「リベラリズムとナショナリズム -道具的ナショナリズムのリベラルな正当化-」を発表した。それと同時に現在、二本目の論文である「ナショナルな自己決定とリベラリズムからの批判-批判の作法としてのリベラルナショナリズム論-」を執筆中である。これは一本目の論文で示したりベラルナショナリズムの擁護論に基づいて、民族自決や内政不干渉に関する実践を評価・批判するためのより深い理論的考察を試みるものである。後者(二本目の論文)は未だ完成段階にはないが、次年度中には公表することを目指す。その後さらに時間が残されれば、深刻な南北格差問題などを扱うグローバルな配分的正義の要請に対してリベラルナショナリズムがどのように応答できるかに関する論文の執筆にも取り組み、この三つの論文を以って、博士論文の基盤としたい。それによって多文化主義やナショナリズムの規範的な一つの理論を構築するという本研究の目的は達成されるだろう。 また本年度は、法理学研究会においてリベラルナショナリズムの理論家であるマーガレット・ムーアの著作The Ethics of Nationalismの文献紹介を行った。そこでは、ムーアの理論と同時に本研究の一端を紹介したので、多くの法哲学研究者から多様な意見・批判を受けることができ、研究遂行のための非常に有益な機会となった。 通常の大学院の講義に関しては、一年目と同様に、法哲学と政治史のスクーリングに参加した。法哲学スクーリシグでは、主に日本の法哲学思想を多角的に検討し、政治史スクーリングではミシェル・フーコーの著作やフランス政治文化に関する文献を原書で講読し、本研究のテーマに関する知識を得ると同時に語学力の涵養としても有意義であった。両スクーリングには、法哲学と政治理論の一貫した知識を獲得するために、次年度も参加する予定である。
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Research Products
(1 results)