2007 Fiscal Year Annual Research Report
名目金利の非負制約を明示的に導入した場合の、金融政策が経済に与える影響の研究
Project/Area Number |
06J03167
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
荒戸 寛樹 Kyoto University, 経済学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 金融政策 / 内生的成長 / 名目硬直性 / 株価 / 日本経済 |
Research Abstract |
1.内生的成長モデルに名目価格と名目賃金の硬直性、さらに投資の調整費用を組み込み、中央銀行がシンプルな名目利子率ルールを採用する条件の下での最適金融政策を考察した。結果、最適金融政策ルールは長期の成長をほぼ最大化させ、かつそのルールは成長率が外生で与えられたモデルと非常に似たものであることを示した。さらに、最適金融政策ルールの下では経済が名目金利の非負制約に直面する可能性は極めて低いことがわかった。本研究は中央銀行が金融政策を実施する際の、金融政策が長期の成長率に与える影響について、政策の最適性という観点からの重要性は高くないことを意味しており、金融政策研究に一定の貢献をもたらすと考えられる。 2.1980年代の日本において、実物的景気循環モデルから理論的に導かれる株価と現実の株価を比較し、80年代を通じて株価は理論が示すよりも低く推移し、80年代末期の株価上昇期において理論株価と現実の株価が非常に近い値を示していることを示した。本研究は、いわゆるバブル期の株価上昇が経済のファンダメンタルズから乖離したものではなくむしろ株式市場の効率性が高まったことによるものである可能性を示唆しており、いわゆるバブル景気とその後の長期不況の経済学的な解釈に対して新たな貢献を持ち、ひいては日本におけるマクロ経済政策についての研究に一つの基礎資料を提示したと考えられる。
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