2006 Fiscal Year Annual Research Report
テラヘルツ時間領域分光法を用いた水溶液中における生体分子の機能発現機構の研究
Project/Area Number |
06J03184
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
有川 敬 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | テラヘルツ / THz / 水和 / 全反射減衰分光法 / ATR / 局所電場 / 生体分子 |
Research Abstract |
本年度の本研究課題による研究では、水溶液中で生体関連分子に水和した水分子のピコ秒領域のダイナミクスを実験的に明らかにした。水和水のピコ秒領域でのダイナミクスは室温における生体分子の機能発現ダイナミクスと深く関係していると考えられているが、実験的にその性質を調べるのはこれまで困難であった。本研究では測定精度を高めた誘電分光法(テラヘルツ時間領域全反射減衰分光法)と、新規な解析方法を用いて電場に対する水分子の応答関数を求めることで、そのダイナミクスを調べた。その結果、バルク水が数ピコ秒以上の長寿命な応答を示すのに対して、水和水は1ピコ秒以降にはほとんど応答を示さないことがわかった。 本研究で新たに提案している解析方法は、これまで困難であった水溶液系のテラヘルツ領域における誘電スペクトルの解釈を容易にする。水溶液系のテラヘルツ領域における誘電スペクトルはブロードで特徴のないものであり、そこから物理的な議論をすることが難しい。しかし、この方法を用いることにより、そこから水和数や水和水の密度や応答関数といった物理量を定量的に求めることができる。今後この手法は、水溶液中の生体分子やそれをとりまく水和水の研究に新たな知見をもたらすと期待できる。
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