2007 Fiscal Year Annual Research Report
擬二次元三角格子反強磁性体における量子臨界現象としての非従来型スピン状態
Project/Area Number |
06J03191
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
南部 雄亮 Kyoto University, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 幾何学的フラストレーション / 二次元三角格子反強磁性体 / 不純物効果 |
Research Abstract |
幾何学的フラストレーションと低次元性が引き起こす新奇な状態への興味から、擬二次元三角格子反強磁性体NiGa_2S_4を研究している。この物質では80Kの反強磁性的相互作用にもかかわらず、少なくとも0.08Kまで長距離秩序が存在しない。しかし、核四重極共鳴実験(NQR)からはC_M(磁気比熱)/Tがピークを持つ10K付近でスピン凍結が起きていることが明らかになっている。中性子回折実験からは、低温で非共線スピン相関が明らかにされており、その相関距離は1.5Kにおいても格子の7倍程度の2.5nmに留まる。NQRの測定からは、2K以下の低温でGaサイトにおける非均質な内部磁場が観測されており、核磁気緩和率は温度の三乗に近い振る舞いを見せる。これは二次元系における反強磁性体マグノン的な振る舞いと類似しており、C_Mが温度の二乗に比例する振る舞いと整合している。このような短距離相関を持つ磁気状態においてマグノン的な励起が発達できうるのかが非常に興味深い点である。今年度は以下のような研究を行った。(1)NiGa_2S_4の低温相の機構や不純物に対する応答を調べるため、Niサイトの非磁性不純物効果について研究した。様々な不純物を導入した単結晶試料を作成し、不純物スピンの異方性について調べた。低温で現れる比熱の核比熱の寄与も差し引き、NiGa_2S_4で見られる状態が整数のHeisenbergスピンでのみ保持されることを明らかにした。(2)NiGa_2S_4の透過型電子顕微鏡像の観察から、面内では完全性の高い結晶構造が見られるが、c軸方向には積層欠陥構造が存在することを明らかにした。(3)NQR、中性子回折、μSR、光電子分光などの共同研究を推し進めるために、多結晶、単結晶試料の作成と提供を行った。(4)NiGa_2S_4で見られるスピン凍結は通常の磁気転移やスピングラス転移に見られる振る舞いとは大いに異なっており、その領域でのスピンの動的挙動を追うことが重要である。これを調べるため、交流磁化率測定の準備を行った。具体的には、4He温度測定用のインサートやコイル、測定用回路などを作成し、そのチェックを行った。
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Research Products
(10 results)