2006 Fiscal Year Annual Research Report
X線精密分光による前主系列星における高エネルギー活動の起源の解明
Project/Area Number |
06J03210
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
兵藤 義明 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | X線天文学 / X線CCD / 星形成 |
Research Abstract |
銀河中心付近にある大質量星団Archesでは激しい高エネルギー活動が起こっている。Arches星団は1方向にのびた、広がったX線放射が特徴的である。 私はX線天文衛星「すざく」を用いてArches星団の30時間の観測を行い、過去最高質のX線スペクトルを取得した。このスペクトルは2.2keVの高温プラズマ成分、光子指数0.7のベキ関数成分、および6.4keVと7.1keVの輝線からなることを見出した。ベキ関数成分には鉄によるK吸収端は見られなかった。過去のChandra衛星による観測と比較したところ、熱的成分は点状天体の足し合わせで説明できる一方、ベキ関数成分と2つの輝線はより広い星団全体に拡がった放射によることが分かった。また、7.5-10.OkeVのイメージと6.4keVのイメージが似ていることからベキ関数成分と2つの輝線は物理的に同じ起源を持つ放射だと考えられる。 このベキ関数と2つの輝線を説明する放射機構として、(1)Xの光電離による蛍光輝線とトムソン散乱成分、(2)非熱的エネルギー分布を持つ電子の衝突電離と制動放射、の2つの可能性を議論した。その結果、どちらの過程でもArches星団の現在の放射が1次放射源とは考えられないことが分かった。つまり、Arches星団の高エネルギー活動は激しく時間変動しており、現在の拡がった放射は過去の活動性を反映してる可能性があることを指摘した。
|