2006 Fiscal Year Annual Research Report
ボウル型ポルフィリン誘導体の開拓-サブポルフィリン・バッキーポルフィリン合成-
Project/Area Number |
06J03230
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
猪熊 泰英 京都大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ポルフィリン |
Research Abstract |
サブポルフィリンはピロールとメチン架橋炭素が交互に3つずつ縮合した真の環縮小ポルフィリンであり、その存在は数十年前から予言されていたが、その合成ルートは未開拓であった。サブポルフィリンはポルフィリノイド特有の性質を解明する上で重要な化合物であるとともに、この化合物自体が機能性色素として有用な性質を持つと期待されている。初年度の研究において、トリベンゾサブポルフィリン、メゾ-アリールサブポルフィリンの合成を報告することで、これまで長きに渡りベールに包まれてきたサブポルフィリンの合成ルートと基本的性質を明らかにした。 サブポルフィリンはボウル型の14π芳香族性を示す共役面を有し、既存の芳香族化合物には無いユニーくなπ-スタッキング等の相互作用を示した。しかし、世界で初めて合成したトリベンゾサブポルフィリンは化学的に安定である反面、化学修飾が難しく、今後の応用にあたって困難が生じた。そこで、新たにメゾ-アリールサブポルフィリンの合成ルートを開拓し、合成の単離収率をトリベンゾサブポルフィリンの1%から、約6%にまで向上させることに成功した上、種々のメゾ-アリール置換基の導入にも成功した。 サブポルフィリンのメゾ位に結合したアリール置換基は、結合軸まわりのベンゼン環の回転障壁が非常に小さく、-90°Cにおいても高速で回転が可能である。結晶状態でも、メゾ位のベンゼン環とサブポルフィリンの間の2面角は約40。まで小さくなっており、π共役系を通したメゾ-アリール置換基との強い相互作用が期待された。実際、4-nitrophenyl基を有するサブポルフイリンはニトロ基の強い電子吸引性のため、光励起の際に分子内CT相互作用を示し、溶媒の極性に依存して緑色蛍光発光の強度を変化させることが分かった。また、立体障害によりアリール基の回転を阻害することで、サブポルフィリンの蛍光や吸収波長を短波長シフトさせることができることも見出した。
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