2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06J03231
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田中 泰央 Kyoto University, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 環拡張ポルフィリン / 金属錯体 / 骨格変換 / メビウス芳香族性 / 配位不飽和錯体 |
Research Abstract |
8つのピロールからなるオクタフィリンの金属錯体の合成と物性究明についての研究を行った。これまでに、銅二核錯体が熱により定量的に二等量の銅ポルフィリンへと変換される事を見出しているが、その反応機構は明らかになっていなかった。そこで、他の金属についても錯体を合成し、反応性の違いを検討する事にした。亜鉛との錯化からは、定量的に亜鉛二核錯体を得た。この錯体は構造的には銅二核錯体とほぼ同じであるが、熱による変換反応は全く起こらない事を見出した。この反応性の違いについて知見を得るために、分子軌道計算によって反応の中間状態の構造を見積もった。その結果、8の字型構造の交差する部分で渡環相互作用が働き、橋掛けが起こった中間状態が示唆された。橋掛けが起こる二つの炭素原子間の距離は、銅錯体よりも亜鉛錯体の方が遠くなっていることがX線結晶構造解析の結果から分かっており、亜鉛錯体で骨格変換反応が進行しない理由であると考えられる。次に、コバルトとの錯化からは、コバルト単核錯体を定量的に得た。この単核錯体は熱による変換を起こさなかったが、更に酢酸銅と反応させる事によって得られたコバルト銅ヘテロ二核錯体において、熱によるポルフィリンへの変換反応が進行する事を見出し、実験的に反応の活性化パラメーターを得た。これを銅二核錯体の場合と比べる事で、反応がエントロピー支配的に進行する事を確認した。この結果は軌道計算の結果と矛盾しない。一方、トリフルオロエタノールを溶媒として用いたパラジウム錯化から得られた錯体が、軌道計算から示唆された反応の中間状態に類似した構造を有する事を、X線結晶構造解析から確認した。以上の結果より、軌道計算から示唆された反応機構の妥当性を示す事が出来たと言える。 この他に、プロトン化による[36]オクタフィリンのメビウス芳香族性の誘起や、前例のない二価二配位銅錯体についての検討も行った。
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Research Products
(3 results)