2006 Fiscal Year Annual Research Report
植物が昆虫食害に応答してトライコーム密度を増加させる制御機構の解明
Project/Area Number |
06J03244
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉田 祐樹 京都大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | シロイヌナズナ / 表現型可塑性 / 誘導防衛 / 分子遺伝学 / 細胞分化 / パターン形成 / ジャスモン酸 |
Research Abstract |
植物が昆虫食害や傷害を一度受けると、それ以後、よりトライコーム密度の高い葉を形成する誘導防衛現象について、モデル植物のシロイヌナズナを用いて遺伝学的な解析を進めている。 本研究開始時までの成果として、傷害がトライコームの密度増加を誘導するまでを、傷害によるジャスモン酸の生合成、SCF^<COI1>複合体を介したジャスモン酸のシグナル伝達、GL3などの転写因子による表皮細胞の分化制御、という3つの素過程に分割するモデルを提案していた。本年度はこれを補強する新たな多重変異体を作成し、現在これらをまとめた論文を執筆中である。 ジャスモン酸による細胞分化の制御は報告例がほとんど無く、その機構解明は本研究の重要な目標である。本年度はトライコームの密度増加に異常が見られるunarmed9(urm9)突然変異体の解析を主に行なった。表現型解析の結果、urm9突然変異体はジャスモン酸シグナル伝達と表皮細胞分化をつなぐ過程に特異的な異常を示すことが強く示唆された。マッピングによりurm9原因遺伝子の座乗領域を2番染色体の161kbの領域まで狭めることができた。 urm9突然変異体と類似の表現型を示す突然変異体として、新たに23a#1、urm1、urm7、urm10の4系統を得た。このうち23a#1突然変異体についてマッピングを行なった結果、既に表皮細胞分化に関与することが知られているTTG1遺伝子にミスセンス変異を持つことを見出した。さらにurm7突然変異体のマッピングに向けて、現在準備を進めている。 マッピングを行なう過程で、シロイヌナズナの主要な実験系統であるColとLe!との間でトライコーム密度の増加能力に違いが存在することを偶然に見出した。この発見から、誘導防衛の自然多型を司る遺伝子をQTLマッピングにより単離するという、新たな可能性が生まれた。
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