2006 Fiscal Year Annual Research Report
炭素-炭素結合切断を鍵とする新規遷移金属触媒反応の開発とその有機合成への応用
Project/Area Number |
06J03290
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
蘆田 真二 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ニッケル / シクロブタノン / アルケン / 分子内挿入反応 / 酸化的環化反応 / β炭素脱離 |
Research Abstract |
遷移金属触媒による炭素-炭素結合の切断、それにともなう不飽和結合の挿入は、原子効率の良い炭素-炭素結合形成反応として有機合成への導入が強く望まれる反応形式である。本研究ではニッケル触媒を用いることでシクロブタノンへの分子内アルケン挿入反応を達成した。3位にオルトスチリル基を有するシクロブタノンをトルエン中ニッケル(0)触媒存在下100°Cで加熱攪拌したところ、ベンゾビシクロ[2.2.2]オクテノンが良好な収率で得られた。この反応では、形式的に分子内のアルケン部位がシクロブタノンのカルボニル炭素とα位炭素間へ挿入し、2環性の6員環炭素骨格が構築されている。機構的には、まずシクロブタノンのカルボニル基、アルケン部位、およびニッケル(0)による分子内での酸化的環化反応によって、4員環骨格を有するスピロ型オキサニッケラサイクルが生成し、そこからのβ炭素脱離と還元的脱離を経て進行したものと考えられる。本反応は、シクロブタノンの3位やアルケン部位に置換基を導入しても収率良く進行した。また、架橋部にナフタレン骨格を用いても対応する生成物を収率良く与えた。以前に当研究室で報告しているロジウム触媒による分子内アルケン挿入反応は、シクロブタノンのカルボニル炭素とα位炭素間へのロジウムの挿入経由で進行し、同じ3位にオルトスチリル基を有するシクロブタノンからベンゾビシクロ[3.2.1]オクテノンを与える。用いる遷移金属触媒によって、同一出発物質から異なる機構を経て、全く異なる炭素骨-格が生成する点で極めて興味深い結果が得られた。
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Research Products
(1 results)