2007 Fiscal Year Annual Research Report
外場誘起分子内電子移動と柔軟応答構造の連動によるミクロ・マクロ物性の協同的制御
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06J03292
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
桐谷 乃輔 Kyoto University, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 状態変換 / 原子価互変異性 / 集合構造変換 / 二重融解 / 同期変換 |
Research Abstract |
本研究が対象とする「同期変換」は、分子内の自由度に基づいた「分子双安定性」と分子間配置の自由度に基づいた「集合構造変換」を同一の分子系で同時に、かつ協同的に発現する状態変換である。この同期変換の概念を利用すれば、分子の状態を変えうる摂働で集合構造を変えたり、集合構造を変えうる摂動で分子の状態を変えるなどの新奇展開が可能と考えられ、これまで独立的に扱われてきた分子双安定性と集合構造変換を統一的に扱う新しい機能性材料科学を展開できることが期待される。 本年度は、既に得られている「分子状態」と「集合状態」とが同期変換を示すCo錯体に対して、同期を発現するからこそ現れる新奇現象の開発に取り組んだ。分子双安定性モジュールとしては、色、磁気状態の変わる原子価互変異性(VT)を用いた。具体的には、Coを金属とする原子価互変異性錯体ヘアルキル長鎖と水素結合部位を導入することで、加熱過程で「融解→結晶化→融解」を示す二重融解現象を発現する錯体分子を創製した。このCo錯体は一度目の融解において、同期的にVTを発現することが確認された。興味深いことに、融解後の結晶化過程においては逆VTを同期的に示し、続く二度目の融解においてはVTを同期的に示した。通常、逆VTは、エントロピーが減少する過程であるため加熱過程では熱力学的には起こりえない。集合構造変換である二重融解現象と分子双安定性であるVTが同期という関係により結びつけられることで、集合構造変換が示す過程を反映し、その情報を転写した分子双安定性が発現したと考えられる。本結果は、集合構造の摂動により、通常熱力学的には発現しえない分子双安定性をも発現可能であることを示すことから、集合構造が応答しうる電場や磁場の印加による分子双安定性の発現など、全く新しい現象への展開に繋がると考えられる。
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Research Products
(3 results)