2008 Fiscal Year Annual Research Report
大規模系のための高精度理論の開発と遷移金属錯体への応用
Project/Area Number |
06J03296
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大西 裕也 Kyoto University, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 計算化学 / 理論化学 / 遷移金属錯体 / 触媒反応 / 高精度計算 |
Research Abstract |
大規模遷移金属錯体の高精度計算を行うためには、現実系の分子が持つ電子的効果と立体効果を再現するような合理的なモデル化を行わなければならない。平成18・19年度はトリアルキルホスフィン配位子の電子的および立体的効果をモデル化し、高精度計算を可能とする手法を開発した。平成20年度には、この手法をニッケル錯体によるアルキンのアリールシアノ化反応の解析に応用した。計算によって得られた反応の律速段階の活性化自由エネルギーは、実験から推測される値と良好な一致を示した。また、本反応では、アルキンとして非対称なものを用いた場合に生成物に位置選択性が見られることが実験で確認されているが、計算により求めた生成物比は実験による生成物比と非常に良く一致した。 また、これまでのモデル化手法はトリアルキルホスフィン基に限定されていたが、平成20年度には、トリフェニルホスフィン基のようなトリアリールホスフィン基のモデル化に取り組んだ。シグマ供与性のみのトリアルキルホスフィンとは異なり、トリアリールホスフィンはパイ受容性がある可能性があるため、モデル化に先立ってトリアリールホスフィンの主たる電子的効果の解明を行った。その結果、トリアリールホスフィンのパイ受容性はトリアルキルホスフィン基と同程度に小さく、その主たる電子的効果はシグマ供与性のみであることが明らかとなったため、この知見に基づきトリフェニルホスフィンのモデル化をおこなった。これを用いて白金錯体からの一酸化炭素の脱離反応の反応熱を求めたところ、実験値と1kcal/mol以内の誤差で再現することに成功した。 以上のように、平成20年度には、18、19年度で作成した手法の応用を行い、その有効性を確認し、実用化させることに成功した。
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Research Products
(4 results)