2006 Fiscal Year Annual Research Report
がん遺伝子v-Srcがん化細胞における細胞骨格タンパク質ビネキシンの機能解析
Project/Area Number |
06J03326
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
梅本 勉 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | がん形質 / 細胞骨格 / v-Src / ビネキシン |
Research Abstract |
細胞-細胞外基質間の接着を補助するインテグリン裏打ちタンパク質の一つであるビネキシンは、がん遺伝子v-Srcによるがん化で発現が抑制される。私はその発現抑制機構を解明するため、v-Src下流の因子に対する阻害剤を用いた実験により発現抑制経路の特定を試みた。その結果、細胞の増殖や分化をつかさどるMAPキナーゼの一つであるERK、および抗がん剤ラパマイシンの標的分子であり細胞周期の進行等に関与するmTORがビネキシンの発現抑制に関与していることが分かった。 v-Srcでがん化した細胞では、ビネキシンを含む様々なインテグリン裏打ちタンパク質が強くチロシンリン酸化を受ける。これによってタンパク質の結合様式や局在が変化することが、がん形質の発現に結びつくと考えられている。我々はビネキシンのチロシンリン酸化について、そのリン酸化部位の特定やリン酸化機構の解明を試みた。 部位特異的変異体を用いた解析から、ビネキシンの2つのチロシン残基がリン酸化を受けることが分かった。さらに、ビネキシンのタンパク質結合領域であるSH3領域の3つのうち2番目の機能を欠失させた変異体では、ビネキシンのチロシンリン酸化が著しく低下していたことから、2番目のSH3ドメインに結合する何らかの因子がビネキシンのチロシンリン酸化に関与していることが示唆された。 v-Srcがん化によるビネキシンの発現抑制が、細胞のがん形質にどのような影響を及ぼすのかを解明するため、v-Srcがん細胞にビネキシンを再導入した細胞株を用いた解析を行った。しかし、ビネキシンの再発現は細胞の浮遊状態でのアポトーシス耐性能や足場非依存的増殖能などのがん形質には影響を及ぼさなかった。 また、チロシンリン酸化の意義を解明するため、v-Srcがん細胞にビネキシンの非リン酸化型変異体を導入した。野生型を導入した株では、v-Srcがん化によって崩壊したアクチンストレス線維が再強化されたが、非リン酸化型変異体はアクチンストレス線維の増強効果が弱いことが分かった。
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