2007 Fiscal Year Annual Research Report
麻痺性貝毒原因藻シストのミトコンドリア遺伝子の動態解明による発芽予測法の開発
Project/Area Number |
06J03336
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
神川 龍馬 Kyoto University, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 渦鞭毛藻 / 麻痺性貝毒 / シスト / Alexandrium / ミトコンドリア / ゲノム / 翻訳伸長因子 |
Research Abstract |
「研究目的」 海洋性微細藻は海洋生態系の根幹を支える重要な一次生産者である一方で、その一部は、養殖漁業や食品衛生に甚大な問題を引き起こす有害種または有害赤潮形成種である。特に麻痺性貝毒の原因藻であるAlexandrium tamarenseおよびA.catenellaは、世界中にその分布域を拡大しており、シストは上記のAlexandrium両種のブルームにおける「発生源」とも言うべき重要な存在であるにもかかわらず、その生死判別および発芽ポテンシャル評価、シスト発芽後の交配群形成に関する知見は全く得られていない。そこで「シストの生死判別法」、および「シストの発芽ポテンシャル評価法」の手法を開発する。 「研究目標およびその成果」 [研究目標1] シスト発芽に関連すると思われる遺伝子の探索をおこなう。 [研究成果1] 渦鞭毛藻はタンパク質合成にEFLという遺伝子を用いることが知られている。本研究員は有毒種A.tamarenseのEFL遺伝子を同定した。さらに渦鞭毛藻以外の藻類でEFLを探索することは標的種の特異的検出に重要であるため、他の赤潮藻である珪藻に関して同遺伝子の探索を行った。その結果、珪藻の大部分が本遺伝子を有していることがわかり、これは有孔虫から遺伝子水平伝播によって獲得されたものであることが判明した [研究目標2] A.tamarenseおよびA.catenella培養細胞を用いてシストを作成する。作成したシストからの効果的なRNA抽出法を確立し、発見したエネルギー生産における鍵遺伝子をRT Real-Time PCRにより定量的に検出する手法を開発する。 [研究成果2] cox1に関しては栄養細胞およびシストから抽出したRNAのいずれからも増幅された。その一方、cobに関しては、栄養細胞から抽出したRNAからは増幅されるもののシストから抽出したRNAからは増幅が起こらなかった。これらの結果は、今後cobの発現状況をモニタリングすることで、「シストが発芽し、栄養細胞として赤潮を形成する現象を予測する」ことが可能であることが示唆された。
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