2007 Fiscal Year Annual Research Report
小腸上皮細胞分化におけるレチノイン酸受容体とERK経路の機能、及び制御機構の解析
Project/Area Number |
06J03387
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
今城 正道 Kyoto University, 生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | レチノイン酸 / MAPキナーゼ / シグナル伝達 / フォスファターゼ / 核内受容体 / 上皮細胞 |
Research Abstract |
レチノイン酸(RA)シグナル伝達とERK MAPK経路は、共に細胞の増殖や分化の制御において、重要な役割を果たすことが知られている。これまでに、本研究代表者は、(1)RAシグナル伝達とERK経路がそれぞれ正と負に腸上皮細胞の分化を制御すること、(2)RAシグナル伝達がMAPKフォスファターゼ4の発現を誘導することでERKを不活性化すること、(3)ERKの活性化はRA受容体(RAR)の転写活性化能を抑制することを見出していた。そこで本年度は、ERKの活性化によるRARの制御機構について、さらに解析を進めた。RARによる転写活性化には、標的遺伝子のプロモーター上にあるヒストンのアセチル化が必要であることが知られている。ところが、ERKを恒常的に活性化した細胞では、このアセチル化が顕著に阻害された。次に、ERK経路によって発現が制御される遺伝子が、RARの制御に関与している可能性について、siRNAなどの手法を用いて検討した。その結果、ERK依存的に発現が誘導される早期応答遺伝子の一つ、Nur77がERKによるRARの抑制に必要であることがわかった。従って、ERKの活性化はヒストンアセチル化の抑制とNur77の誘導という二つの機構によってRARを抑制することが明らかになった。これまでに、多くの癌細胞でRasやRafの変異を介してERKが活性化していること、一方RARの機能は損なわれていることが報告されている。そこで、今回発見したERKによるRARの制御機構が、このような癌細胞において働いているか検討した。その結果、B-Rafの活性化変異(V599E)を持つ癌細胞では、恒常的なERKの活性化によって実際にRARが抑制されていることが示された。以上の結果は、細胞の癌化におけるERKの新しい機能を明らかにしており、基礎の分子生物学だけでなく、癌研究にも重要な知見であると考えられる。
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Research Products
(1 results)