2008 Fiscal Year Annual Research Report
小腸上皮細胞分化におけるレチノイン酸受容体とERK経路の機能、及び制御機構の解析
Project/Area Number |
06J03387
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
今城 正道 Kyoto University, 生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | シゲナル伝達 / MAPキナーゼ / レチノイン酸 / フォスファターゼ / Nur77 / RIP140 / 腸上皮 |
Research Abstract |
レチノイン酸(RA)シグナル伝達とERK MAPキナーゼ経路は、共に細胞の増殖や分化、アポトーシスを制御することで、胚発生や組織恒常性の維持など多彩な生命現象に関与することが知られている。これまでに、本研究代表者は、(1)RAシグナル伝達とERK経路がそれぞれ正と負に腸上皮細胞の分化を制御すること、(2)RAシグナル伝達がMAPKフォスファターゼ4(MKP4)め発現を誘導することでERKを不活性化すること、(3)ERKの活性化が、早期応答遺伝子であるNur77の発現を誘導することで、RA受容体(RAR)の転写活性化能を抑制することを見出していた。本年度は、ERKの活性化によるRARの制御機構について、さらに解析を進めた。その結果、近年同定された新しいタイプの核内受容体補抑制因子であるRIP140が、ERKによるRARの抑制に必要であることが分かった。詳細な解析を行った結果、ERKの活性化はRIP140のリン酸化を誘導すること、さらにはRIP140とRARの相互作用を促進することを見出した。従って、ERKの活性化はNur77の発現誘導とRIP140のリン酸化による機能促進という2つの機構を介してRARを抑制すると考えられる。以上の結果は、腸上皮細胞運命の制御において重要な役割を果たすERK経路とRAシグナル伝達の新しいクロストークを明らかにしている。これまでに、様々な組織の癌においてRARの機能が抑制されていること、それによって癌細胞の増殖や生存が促進されていることが報告されている。本研究で得られた成果は、このRAR抑制がERK経路によって担われていることを示唆しており、基礎の分子生物学だけでなく、癌研究にも重要な知見であると考えられる。
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Research Products
(1 results)