2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06J03402
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
谷川 博信 Kyoto University, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 磁壁 / 磁壁電流駆動現象 / 垂直磁気異方性 / Waler breakdown / 強磁性細線 / スピントルク / しきい電流密度 |
Research Abstract |
近年、強磁性細線中の磁壁電流駆動現象についての研究が盛んに行われている。磁壁が電流によって駆動する物理現象は、スピントランスファー効果と呼ばれている。この現象を用いることで、磁壁を用いたメモリデバイスの書き込みに応用できることが期待される。しかしながら、これまで実験で用いられてきた面内磁化を有する強磁性材料においては、磁壁を電流によって駆動させるために必要な電流密度(しきい電流密度)が非常に高いために、デバイス応用のためには新規材料を用いたしきい電流密度の低減が必須であると考えられてきた。近年、そのブレイクスルーとして垂直磁気異方性を有する強磁性体を用いれば、しきい電流密度が低減できるという理論計算が報告された。その報告に基づいて、垂直磁気異方性を有するCo/Ni薄膜を微細加工して試料を作製し、磁壁電流駆動実験を異常ホール効果によって電気的に検出した。その結果、しきい電流密度は従来用いられてきたNiFe合金のものと比べて低くなることを実験的に示した。また、しきい電流密度の細線幅依存性について調べた結果、理論計算から導かれたしきい電流密度の細線幅依存性の振る舞いと一致していることがわかった。また、面内磁化材料であるNiFe細線において、外部磁場による磁壁の移動確率を異方性磁気抵抗効果を用いて電気的に測定した。その結果、外部磁場が増加すると磁壁移動確率が極小値をとるという現象を実験的に発見した。このような特異な現象は、マイクロマグネティクス計算結果と半定量的に一致しており、磁壁移動確率減少の原因はWalker breakdownによる磁壁の内部構造変化と細線端のラフネスの存在が関係していることを明らかにした。
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