2007 Fiscal Year Annual Research Report
現代日本社会において性同一性障害が作られる過程についての医療人類学的研究
Project/Area Number |
06J03413
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
池田 瑞恵 Kyoto University, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 性同一性障害 / ジェンダー / セクシュアリティ / 医療化 / マイノリティ |
Research Abstract |
1.大学病院ベースのチーム医療の実地調査 公的な性同一性障害医療にいち早く取り組んだ大学病院Aを訪問し、医療従事者への聞き取り調査と診療システムの見学を行った。また、他の大学病院ジェンダークリニックのメンバーである医師等に聞き取りを行った。大学病院という巨大な機構において、「性同一性障害」という新たな疾病概念を浸透させ、科をまたいだ診療システムを築いていくミクロ・マクロな過程と、それに携わる人々の苦労や工夫が明らかになった。 2.個人病院ベースのチーム医療の実地調査 美容形成外科B、精神科Cの見学と、医師や医療スタッフへの聞き取り調査を行った。B医院には2週間滞在し、フォーマル・インフォーマルな診療ネットワークの形成を分析した。かつて「ヤミ」の側にあったB医院が、診療システムを整え、他の個人病院や海外の病院を「正規ルート」の側に取りこんでいく過程から、「正規ルート」と「ヤミ」の境界が揺るがされ、大学病院中心のものとはまた異なるシステムが登場する状況が見られた。 3.タイの性転換医療の実地調査 タイの性転換医療機関(5医院)を訪問し、特に日本人の利用について聞き取りを行った。タイの性転換医療は従来安さが売りだったが、日本人患者獲得の戦略として、施設や設備の高級化、日本人スタッフの雇用等を行っており、価格を上げても医療上の信頼感を生み出そうとしている現状がわかった。 4.トランスジェンダー(性別越境者)の医療利用の追加調査 昨年度に続き、関東・関西でのイベント・自助活動への参加のなかで、医療機関の利用や身体の医療技術による変化などについて、聞き取りを行った。 5.アジアのトランスジェンダーとの比較文化的調査 タイのトランスジェンダーのコミュニティ・センターへの滞在と、国際会議(ILGA-ASIA)に参加したアジア各国のトランスジェンダーへの聞き取りから、日本の現状を比較文化的に考察した。
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