2006 Fiscal Year Annual Research Report
チンパンジーにおける互恵的利他行動と他者理解の比較認知科学的検討
Project/Area Number |
06J03451
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山本 真也 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | チンパンジー / 互恵性 / 利他行動 / 協力 / 他者理解 / 社会的知性 / 比較認知科学 / 霊長類 |
Research Abstract |
18年度は採用初年度であり、申請書に示した方法にしたがって、チンパンジーを対象に互恵的利他行動にかんする実験研究をおこなった。実験は、月曜から土曜日の週6日、毎日朝9時から夕方4時までおこなっている。母子3組を含むチンパンジー10個体を対象とした。トークンと自動販売機を用い、2個体を同時に実験した。チンパンジーがトークンを自動販売機に投入すると、隣のブースにいる相手チンパンジーに食物報酬が出るという場面を設定した点が本研究のポイントであり、ユニークな点である。さまざまな条件を設定し実験した結果、2個体間の社会的関係、1回ごとの投資量、役割交代のルールといったものがチンパンジー間の互恵的関係に影響を与えることがわかった。ヒト以外を対象にした互恵的利他行動の研究が世界的にもきわめて少ない中で、これらの研究成果は、ヒト社会の成り立ちにかんして、進化的な視点から有益な示唆を与えるものと考えられる。成果の一部を、国際霊長類学会、日本霊長類学会、日本動物心理学会等、多数の学会・研究会等にて口頭あるいはポスターにて発表した。また、執筆した論文が雑誌「科学」に掲載されたほか、現在3本の英語論文を投稿あるいは執筆中である。現在は、新たな実験も進めている。この実験では、チンパンジーが自分だけ食物を獲得するか、自分だけでなく相手にも食物を与えるか、といったことを調べている。この研究は、チンパンジーが相手への報酬に対して感受性を持っているのかどうか、相手の利他行動にたいしてお返しをするのかどうかなどを明らかにすることによって、チンパンジーの互恵的利他行動の形成や維持のメカニズムに対する理解を深めるものと考えられる。今後も継続して実験をおこなっていくとともに、次年度では、論文執筆にもさらなる力を注ぎたい。
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Research Products
(1 results)