2006 Fiscal Year Annual Research Report
可塑的な菌根共生が支える地上部の生物多様性維持機構の解明
Project/Area Number |
06J03460
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西田 貴明 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 生物間相互作用 / 生物多様性 / アーバスキュラー菌根菌 / 表現型可塑性 / 誘導防衛反応 / 植食者抵抗性 / 土壌微生物 / ミヤコグサ |
Research Abstract |
本研究課題では、植物と根系で共生する土壌微生物(菌根菌)が誘導防衛反応を維持するメカニズムの解明を目的とし、まず、モデル実験系の構築を試みた。室内実験によって、モデルマメ科植物のミヤコグサは、ナミハダニの食害によってフェノール性物質の増加などをもたらし、食害を受けたミヤコグサを摂食するハダニのパフォーマンスは未加害のミヤコグサを利用するハダニに比べて低下することが示された。このため、ミヤコグサとハダニの系では、誘導防衛反応を含むモデル実験系となることがわかった。この実験系を用いて、土壌微生物であるアーバスキュラー菌根菌(AM菌)が植物の誘導抵抗性の発現に及ぼす影響を評価した。菌根接種の有無が異なる実験株に食害を与え、食害による植物の誘導抵抗性の発現をナミハダニによるバイオアッセイで評価した。その結果、AM菌を接種した株では、食害後早期にハダニのパフォーマンスが低下し、誘導抵抗性の発現が迅速に起こることが明らかにされた。また、植物が誘導抵抗性を発現させる際のAM菌に対するコストを評価するために、AM菌が食害を与えた植物の種子生産に及ぼす影響を調べた。AM菌は未加害の植物では種子生産量を増加させたが、加害植物では逆に低下させることが示され、AM菌のコストが大きいことが示唆された。さらに、共生するAM菌の種の違いによる植物の成長や食害に対する抵抗性の違いを評価するために、6種類のAM菌を用いて実験を行った。AM菌の植物の成長量やハダニに対する抵抗性に対する効果は、種の違いによって大きく変化した。また、植物に対して最も大きいプラスの効果をもたらすAM菌の種は、食害によって変化することが示された。このため、植物は共生相手が異なると植食者に対する防衛戦略が変化する可能性が示された。しかし、野外では植物は同時に多数の種のAM菌と共生関係を持っており、今後はAM菌群集としての機能を解析する予定である。
|