2007 Fiscal Year Annual Research Report
可塑的な菌根共生が支える地上部の生物多様性維持機構の解明
Project/Area Number |
06J03460
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西田 貴明 Kyoto University, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | アーバスキュラー菌根菌 / 生物多様性 / 生物間相互作用 / 間接効果 / ミヤコグサ / ナミハダニ / 誘導防衛 / 養分供給 |
Research Abstract |
今年度は、土壌中の菌根菌の種の多様性が植物の成長や植食者に対する抵抗性に及ぼす影響を明らかにするために、接種する菌根菌の種数や種組成を変えた植物を用いて、植物の成長や植食者に対する抵抗性を評価しました。その結果、菌根菌の種の増加は植物の成長を向上させることが示され、また植食者に対する誘導抵抗性の効果を高めることで、植食者の増殖速度を低下させることが明らかになりました。また、植食者の食害が菌根菌の組成に与える影響を明らかにするために、PCR-RFLP法を用いた菌根群集の解析方法を開発しました。これまで実験に用いてきた3種類の菌根菌に共通のプライマーを設計し、これらの菌根菌を区別することのできるプライマーと制限酵素の組み合わせを30パターン以上から選定しました。その結果、複数の種類が接種された植物の菌根菌の組成を定量的に評価する解析方法を確立することができました。この解析方法を用いて、未加害の植物と食害を受けた植物の菌根菌の組成を調べました。その結果、未加害の植物では成長に効果の高い菌根菌が優占していることが示されました。また、食害された植物では、成長に効果の高い菌根菌が存在することが示されましたが、食害に対する抵抗性を高める菌根菌の割合が増加していることが示唆されました。つまり、植食者の食害は、植物の防衛に高い機能を持つ菌根菌を選択させ、植物に適応的な変化をもたらす可能性が示されました。 今後は、これらの実験結果に基づき、「植物と菌根菌の関係が状況依存的に変化することで、菌根菌の多様性機能が効果的に発現する」という可能性についてさらに詳細に検討する予定です。本研究の成果は、植物と植食性昆虫の共進化の基盤を明らかにするとともに、地上部の生物群集の成り立ちや多様性の維持機構の理解を促すと考えられます。
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