2008 Fiscal Year Annual Research Report
可塑的な菌根共生が支える地上部の生物多様性維持機構の解明
Project/Area Number |
06J03460
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西田 貴明 Kyoto University, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 菌根菌の多重共生 / 誘導抵抗性 / アーバスキュラー菌根菌 / 地上部-地下部相互作用 / ナミハダニ / ミヤコグサ / 間接防衛 / PCR-RFLP法 |
Research Abstract |
前年度までの2年間で、本研究課題に関わる4つの研究をおこなっていた。研究(1):菌根菌が植物の誘導抵抗性に及ぼす影響、研究(2):植物の食害応答下における菌根菌の動態、研究(3):菌根菌が植食者に与える種特異的な影響、研究(4):菌根菌の多重共生が植物の成長と被食防衛に果たす役割、である。本年度は、このうち前年度におこなった研究(3)、(4)の補足実験に加えて、派生した以下の2つの研究をおこなった。 研究(5):PCR-RFLP法による菌根菌の多重共生の検出 研究(4)において、菌根菌の多重共生が、異なった種類の菌根菌が異なった機能を植物に付与することが明らかにされた。本研究では、実際に共生している菌根菌の種組成を直接的に検出することを目的とした。菌根菌の遺伝情報を用いて種組成を検出することを試み、研究(4)で用いた3種類の菌根菌を分離する実験方法を決定した。本方法を用いて研究(4)の菌根共生の多重共生を評価することで、研究(4)の結果をもたらすメカニズムを明確に説明することが可能になった。 研究(6):菌根菌が植物の間接防衛に与える影響 研究(1)及び、研究(3)において、菌根菌は植物の直接的な誘導抵抗性を強化することが明らかになった。多くの植物は揮発性化学物質によって天敵を誘引する間接防衛反応も行なう。そこで、本研究では、菌根菌が間接防衛に及ぼす影響を評価することを試みた。この研究では、捕食者の誘引効果を評価するための選択実験、及び植物が放出する揮発性化学物質の分析を行なった。その結果、菌根菌と共生関係を持った植物は、植食者に食害された後に捕食者の誘引性を高めることが明らかになった。その際の揮発性化学物質の量は、菌根菌の有無で有意な違いはなかったが、菌根菌と共生した植物で多い傾向があった。従って、本研究の結果は、菌根菌が植食者の食害に誘導される間接防衛を高める可能性を示唆した。
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