2006 Fiscal Year Annual Research Report
レオ・ベルサーニの共同体論とアメリカのエイズ危機における生政治の展開
Project/Area Number |
06J03539
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
高橋 慎一 立命館大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 医療政策 / 生政治 / 共同体論 / リベラリズム / 福祉国家 / セクシャルマイノリティ |
Research Abstract |
本研究は、ポスト福祉国家において展開する人体の資源化に対して倫理的な規制を提起することを目的とする。具体的には、以下の三点を研究してきた。 1、米国エイズ危機下において、一方で同性パートナーが医療資源とされ、他方で更生不可能とされた人口層を廃棄する「生政治」的展開を分析するための、データ収集を行った。これについては2006年6月に、(1)ニューヨーク州Albanyで当事者団体CAPITAL DISTRICTとIN OUR VOICEを対象として聞き取り調査を行い、行政とNon profit (NP)の活動がコミュニティを基盤に展開していく動態を観察した。また、(2)同団体にて行政資料の調査を行い、National Institute of Health (NIH)が主導したセクシャルマイノリティの医療政策に関するデータを収集した。(1)(2)のデータを活用して、2007年度には、エイズの当事者運動の一部が同性パートナーの当事者運動に方向転換した過程、すなわち、医療の危機を同性パートナーの無償のケア労働で補填しようとした行政の動向について、研究をすすめる。 2、人体の資源化に対して倫理的規制を提起する学術横断的な運動として、「クイア理論」を分析した。クイア理論は、セクシャルマイノリティのコミュニティに行政が割り振る負担とその帰結を批判的に考察していた。(1)ジュディス・バトラーとレオ・ベルサーニの論争を検討した。ベルサーニの「共同体」論を検討することで、同性パートナーが無償でケア労働を行うような政策が推進されるとして、何が、どこまで、何を根拠として許容され、許容されないのかという問いへの解を導くための準備を行った。2007年度には、クイア理論が社会的格差を是正する配分的正義の議論と交わる地点を分析していく。 3、日本におけるセクシャルマイノリティの医療政策を調査した。(1)性同一性障害医療の指針(1998)の成立を分析するため、資料を収集した。また、(2)末期医療の治療方針に関する指針に同性パートナーの権利を推進する運動について調査した。
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