2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06J03777
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
深谷 雅嗣 University of Tsukuba, 大学院・人文社会科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 古代エジプト / 祭礼 / 神託 / 民衆 / オペト祭 / 谷の祭 |
Research Abstract |
昨年度に引き続き、今年度の最初の3ケ月を英国・オックスフォード大学クイーンズカレッジにて研究のため滞在し、当地でエジプト学研究者である、J. ベインズ教授の指導を仰ぎながら博士論文の提出の準備を行なった。 日本に帰国後は、日本宗教学会(9月15-17日、於立正大学)において、博士論文の骨子の一部である神託授受と祭礼の関係について個人発表した。これまで、祭礼日と神託の授受が行われた日が一致しないと見解を示す研究者もあったが、両者ともに週末(10日毎)に定期的に執行されたことが判明した。特に、民衆に司法の機会を与える神託は、衆人環視のもと、祭礼という堤において下され、同一の事案が何度も審理される機会が与えられたことが明らかになった。また、世俗の司法機関であるqnbtと協同して、神託はより高次の法的枠組みの一部として機能したが、必ずしも拘束力を持たなかったと考えられる。いずれにしても、祭礼が単なる神学の実践の場ではなく、民衆にとって実利的な価値のあるものであり、神託の授受はそのあり方の一つであったと結論づけられる。 また、欧米の研究者によって主導されてきた当分野において、これまでの研究成果を英文の雑誌論文として発表できたことは、自身の成果を広く報告する意味で有意義であった。オペト祭と谷の祭が社会的にどのように機能し、民衆にとっていかなるインパクトを与えたのかを主題にしたこの論文は、両祭に関する研究がおよそ半世紀のあいだ、ほとんど進んでいない不幸な学的状況に一石を投じるものである。
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Research Products
(2 results)