2006 Fiscal Year Annual Research Report
読解における意味概念のオンライン統合とチャンキングのメカニズムに関する研究
Project/Area Number |
06J03783
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
土方 裕子 筑波大学, 大学院人文社会科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | リーディング / チャンキング / チャンク / 能格動詞 |
Research Abstract |
本研究では、(1)読み手の自発的なチャンキング単位と提示された一律のチャンキング単位が一致する場合と一致しない場合で、日本人英語学習者の読解がどのように異なるか、(2)読解中のチャンキングに動詞の能格性をどのような影響を与えるか、の2点を研究課題とし、3つの調査を実施した。自他両用法で用いることができる「能格動詞(e.g.,change, open)」に焦点を当て、他動詞用法が強く予測される動詞と、自動詞用法が強く予測される動詞が、それぞれ日本人学習者のチャンキング過程にどのような影響を及ぼすかを検証した。予備実験の結果から、日本人英語学習者が他動詞として用いる傾向が強いものを「他動性が高い能格動詞」、自動詞として用いる傾向が強いものを「他動性が低い能格動詞」として抽出した。 実験1および実験2は、読み手自身のチャンキング単位の特定を目的とした。チャンキングが知覚処理にも意味処理にも関連することから、実験1は知覚面を、実験2は意味統合の側面に焦点を当てた。実験1ではパソコン画面に提示される英文を読み、画面が消えると同時に覚えている限りの英文を紙に書き出す課題を行った。実験2では単語単位でパソコン画面に提示し、その処理時間の推移や処理時間が多く認められた箇所に着目した。その結果、(1)日本人英語学習者は句末でも文末でも意味統合を行うこと、(2)意味統合には動詞の能格性が影響していること、および(3)(2)の度合いには英語読解熟達度が作用することが明らかになった。実験3は、(a)実験1や2で得られた読み手自身のチャンキング単位とは異なる大きさの単位で提示されても、必ずしも読みにくさを感じるわけではないこと、(b)他動性が高い動詞の場合には、動詞までを1つのチャンクにするのではなく、目的語までを1つのチャンクと見なす傾向があることを示した。
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