2007 Fiscal Year Annual Research Report
読解における意味概念のオンライン統合とチャンキングのメカニズムに関する研究
Project/Area Number |
06J03783
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
土方 裕子 University of Tsukuba, 大学院・人文社会科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | リーディング / チャンキング / チャンク / 能格動詞 |
Research Abstract |
本研究では、(1)読み手の自発的なチャンキング単位と提示された一律のチャンキング単位(チャンク提示)が一致する場合と一致しない場合で、日本人英語学習者の読解がどのように異なるか、(2)読解中のチャンキングに動詞の他動性がどのような影響を与えるか、の2点を研究課題とし、3つの調査を実施した。 実験1から実験3までは同一の受験者が受験したため、各実験を分析した後で、3つの実験を総合しながら量的および質的に分析することが可能であった。どのような読み手に対して句基準のチャンク提示が有効になるのかという点について、L2読解熟達度やワーキングメモリ容量などの要因から説明することは困難であった。一方で、読み手自身のチャンキング・パターンは、チャンク提示が理解を促進する読み手と、かえって理解を妨げる読み手を区別する傾向が見られた。これは、量的分析のみならず、質的分析からも支持されたものである。具体的には、知覚チャンクも意味統合単位も共に大きな読み手は、チャンク提示に読みにくさをあまり感じなかったが、知覚チャンクが大きくても意味統合単位が小さな読み手は、チャンク提示に読みにくさを感じていた。また、知覚チャンクが小さな読み手にとっては、意味統合単位にかかわらず、チャンク提示が効果的に働くことも示された。総合考察は、本研究により得られたデータを、文処理のモデルや心理学分野も視野に入れたチャンキングのモデル、ワーキングメモリなどの理論と照合し、先行研究のデータと比較しながら論じた。 結論として、(a)L2読解熟達度やワーキングメモリの要因よりも、チャンク提示の効果は読み手自身のチャンキング・パターンによって異なること、(b)動詞バイアスの一つである他動性が(a)の読み手自身のチャンキング・プロセスに影響を与えることが示された。
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