2006 Fiscal Year Annual Research Report
古代東地中海世界に果たした北レヴァント文化の歴史的意義
Project/Area Number |
06J03787
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
長谷川 敦章 筑波大学, 大学院人文社会科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 北レヴァント / シリア・アラブ共和国ラタキア県 / 紀元前2千年紀 / 中規模テル型遺跡 / テル・ナハル・アル・アラブ / 調査対象の偏重 / ケービル川流域 / 内陸部 |
Research Abstract |
本研究において最も重要となるシリア・アラブ共和国ラタキア県における遺跡踏査および測量調査をおこなった。ラタキア県における考古学調査の問題点の一つは、調査対象遺跡の海岸に面した大規模テル型遺跡への偏重である。本研究の目的の一つは片寄りを是正し、より実態に即した歴史像を描くことである。そのため今回の測量調査は、海岸線から内陸に位置する中規模テル型遺跡を選定条件とし、ラタキア県北部に位置するテル・ショーカット、中部に位置するテル・ナハル・アル・アラブ、南部に位置するテル・シムハーニの3遺跡において測量調査を実施した。 着目すべきはテル・ナハル・アル・アラブの斜面で確認された傾斜角度に明らかな緩急が存在している点と、特に東側斜面で確認できるテラス部分の存在である。この特徴は、テル・ショーカットおよびテル・シムハーニでも確認することができ、内陸にある中規模テル型遺跡の共通する特徴である。既に同様な立地・規模の遺跡であるテル・イリズのシリア隊による発掘成果との比較を行った結果、この勾配変化パターンは周壁の存在と深く関連している。 一方でラタキア県における紀元前2千年紀以降の遺跡を立地と形態に基づいて類型化を行った。当該期の遺跡は、主に沿岸部と河川流域に集中して確認されている。注目すべきは特にケビール川流域に位置する遺跡である。それらは丘陵地帯から山地帯にかけ、河岸へ舌状に突出した自然丘陵上に薄い文化堆積を有し、川からの比高差が大きく、河口から10km以上上流に位置している点から生活集落よりも砦としての性格が強い。また重要視すべきは、ヒルベット・アル・ムサッラに代表される自然地形の一部に遺物の包蔵地が確認できるが、明確なプランを有するテルを形成していない特徴をもつ遺跡の存在である。これまで取り上げられてこなかったこうした特徴を持つ遺跡の存在を、念頭におきつつ歴史を再構成しなくてはならない。
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Research Products
(3 results)