2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06J03808
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
迫坪 行広 筑波大学, 大学院数理物質科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 金属クラスター / 金属微粒子 / トンネル分光 / 走査型トンネル顕微鏡 / 離散準位 / 局所状態密度 |
Research Abstract |
我々は金属クラスター(原子数:50個〜400個)の離散的な電子状態を観測することを目的として研究を行った。個々の金属クラスターの電子状態の測定は、走査型トンネル顕微鏡(STM)を用いたトンネル分光法が有効である。トンネル分光を行うためには金属クラスターにトンネル障壁を介して2つの金属電極を接続しなければならない。この際、金属クラスターの電子状態が外界と電気的に孤立していなければならないので、トンネル障壁の抵抗は量子抵抗より大きい必要がある。我々は、まず適当な処理を施すことでNiAl(110)基板表面に薄い絶縁膜を作製し、次にこの基板上に金属を蒸着することで、絶縁膜上に金属クラスターを作製した。作製された金属クラスターの位置、粒径の分布はSTMを用いて取得した凹凸像から調べた。測定は、温度4.2Kにおいて、個々の金属クラスター上約1nmにSTM探針を固定して行った(金属基板/絶縁薄膜/金属クラスター/真空/STM探針)。我々の実験環境では、サンプル作製からトンネル分光測定までの全てを超高真空中で行うことが可能である。 電流電圧特性には、ゼロバイアス近傍に単一電子帯電効果を反映したクーロンプロッケイド領域が、また全域にわたってクーロン階段構造が観測された。また、ロックインアンプを用いた精密な測定により、金属クラスターの離散的な電子状態を反映したスペクトルを得ることに成功した。粒径の異なる金属クラスターのスペクトルの形状は、それぞれ異なっており、エリプソイダルシェルモデルで期待されるスペクトルのクラスターサイズ依存性と矛盾しない。またクラスター上部の全領域で微分コンダクタンスを測定しマッピングした結果、クラスター内の電子の固有状態を反映していると考えられるパターンの観測に初めて成功した。
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