2007 Fiscal Year Annual Research Report
ビスマス系銅酸化物高温超伝導ウィスカーの育成および磁場中における物性に関する研究
Project/Area Number |
06J03829
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
丹下 将克 Iwate University, 工学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 銅酸化物高温超伝導体 / 微細結晶 / 臨界電流密度 / ピーク効果 / サイズ効果 / 弱磁場環境 / 結晶成長制御 |
Research Abstract |
本研究では、特異な性質を示すウィスカー結晶が研究対象である。 1.高温超伝導体おいて、渦糸(量子化磁束)に対するバルクピンニング(結晶欠陥によるピン止め)の効果が寄与して、磁場の増加と共に臨界電流密度(Jc)が上昇してピークに達するというピーク効果が観測される。そして、Jcのピークが現れる磁場をピーク磁場(Hpeak)と呼び、そのHpeakは数100 Oe以上である。しかし、本研究者らがBi2Sr2CaCu2O8+δ(Bi-2212)ウィスカーで発見した弱磁場環境下でのJcのピークは、高温領域において100 Oe以下の磁場で起こる。この領域は、バルクピンニングの効果が渦糸に対して優位に働く温度・磁場領域とは大きく異なる。本研究では、異なる試料幅をもつウィスカーにおいてピーク効果の比較を行ってきた。その結果、Hpeakの値が試料幅に依存して系統的に変化し、Hpeakの値を予想できることが分かった。この結果は、表面バリヤの効果だけでなく、微小な試料サイズによる渦糸数の制限がピーク効果を生んでいることを示唆している。 2.Bi-2212ウィスカーの成長制御に関して、本研究者らは、結晶成長のための熱処理を行う前に、前駆体であるBi-2212ペレット(基板)に対して部分的にBi2O3を蒸着することによって、基板の指定した領域にウィスカーを選択的に育成できることを報告した。本研究では、成長の種としてBi2O3微粒子をペレット上に分散させた後で、結晶成長のための熱処理を行って成長制御を試みた。Bi2O3微粒子は均一沈殿法である尿素法によって作製し、その後、Bi2O3微粒子を基板に分散させて熱処理を行った。しかし、ウィスカーは成長しなかった。この結果は装置上の問題(電気炉の温調器のPID値の変更など)が主な要因であり、微粒子分散の影響が結晶成長に直接反映されなかったことが、現在分かっている。
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