Research Abstract |
大規模な質問紙調査により,自分らしくある感覚(本来感)の発達的な検討を行った。その結果,本来感は年代とともに上昇し,50代で一度伸び悩む時期が来るものの60代で再度回復してゆき,70代以上では高い水準で落ち着くことが示唆された。さらに,若者の本来感は現在の生活のあり方に影響を受けやすいこと,50代と60代ではポジティブな生活状況(e.g.家族と接する時間,ひとりでのくつろいだ時間)で自分らしさを感じることが全体としての本来感に影響しやすいこと,そしてそれに対照的に,20代では普段の生活では余り行わないような色々な活動で自分らしさを感じることが重要であることが示唆された。また,50代や60代では,他の年代よりも,自分をどのように作ってきたのかという自己形成経験の色々な側面が本来感に関係することが示唆された。50代や60代ではそのような様々な自己形成経験が本来感を揺るがせる時期であり,それゆえに本来感は一度危機に晒されるものの,70代以上になるとそうした要因の影響を受けにくく,高い水準で落ち着くことが示唆された。また,過去を肯定的に捉え,未来に希望をもつと同時に,ある種の諦観をもって人生を受容することがどの年代においても高い本来感と関連することが示唆された。さらに,本来感と精神的健康との関連は,大学生と同様に成人においてもみられることが確認された。また,米国の社会心理学者であるKernis教授とともに共同研究を実施し,仮説生成,研究の方向性について議論をし,一次的なデータを得た。その結果,Kernisが作成した本来性尺度が日本人に対しても適用可能であることが示唆された。
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