2008 Fiscal Year Annual Research Report
清末、東チベットにおける新政と政治・社会構造の変容-土司制度の解体と民族問題-
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06J03935
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
小林 亮介 University of Tsukuba, 大学院・人文社会科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 東チベット / ダライラマ政権 / 清朝 / 境界問題 |
Research Abstract |
[『アジア・アフリカ言語文化研究』掲載論文] 1912年の清朝の崩壊にともない,中国からの「独立」を唱えるダライラマ政権と,清朝版図の継承を試みチベットの領域的統合を目指す中華民国との間で対立が顕在化し,両者の境界地帯であった東チベットは,中華民国・ダライラマ政権双方が統合を図る係争地として激しい抗争の舞台となった。従来,この境界問題の歴史的背景については比較的多くの研究が積み重ねられてきた。しかしこれらは国際関係論や中国-チベット間の政治外交史から議論することが多く,その評価も,列強の中国領土分割の過程であるのか,独立を目指すチベットの外交努力とみるのかによって分かれる傾向にあり,実際に東チベットをめぐり両者が従来どのような統治を展開していたのかという根本的問題は等閑視されてきた。その一因として,東チベットの政治状況を理解するために重要なチベット語史料が十分に発掘・利用されてこなかったことを指摘できる。私は従来の漢語・英語の史料に加え,台北・北京・成都で収集可能なチベット語文書史料を組み合わせ,19世紀から清朝崩壊前後の東チベットにおける中国とチベット政府の支配権のあり方とその推移を立体的に描出し,問題形成の背景の解明を目指した。そして,19世紀後半のダライラマ政権の東チベットにおける支配体制の構築とその展開,20世紀初頭の清朝による解体・再編という事態が,清朝崩壊後の中国・チベット間の境界問題を複雑化させた,現実的かつ重大な要因の一つとみなすことができるという見解を提示した。
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Research Products
(2 results)