2008 Fiscal Year Annual Research Report
ミトコンドリアDNAの病原性及び多型突然変異が生体機能に及ぼす影響の解析
Project/Area Number |
06J03950
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
石川 香 University of Tsukuba, 大学院・生命環境科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ミトコンドリア / mtDNA / 病原性突然変異 / 転移 / 活性酸素種 / 解糖系亢進 / 多型突然変異 / 造腫瘍性 |
Research Abstract |
昨年度末に投稿・受理され、今年度掲載された論文において、mtDNAの特定の病原性突然変異ががん細胞の転移能に影響を及ぼし得る、という全く新しい概念を、マウスがん細胞を用いて立証することに成功した。この成果はScience誌に掲載されただけでなく、CellやNature Medicine、Nature Review Cancerなど複数の雑誌において紹介されるなど、大きな注目を集めた。本年度はこの内容を更に深化させ、mtDNA誘導性がん転移は、呼吸活性を低下させるすべてのmtDNA突然変異によって起こるのではなく、あくまで活性酸素種(ROS)の過剰産生が転移能獲得のための必須条件であることを示した。mtDNAの突然変異によってミトコンドリアの呼吸機能が低下し、それを補うために解糖系が亢進したような状態であっても、ROS産生を起こさない場合には転移が観察されなかったためである。この結果は、解糖系の亢進ががん細胞の悪性化を招くとした通説に対する反証であり、この通説が常に正しいとは限らないということを示したと言える。また、一部のヒトがん細胞においても、mtDNAの病原性突然変異が転移能獲得に関与していることを示唆する結果を得ている。こうしたmtDNAから転移能獲得に至るまでのより詳細なプロセスの検討や、ヒトのがん細胞を用いた検証から得られる知見を応用することにより、がん細胞の転移しやすさの予測や転移の抑制に役立つ可能性があると考えている。 一方で、同種異系統のマウスに由来する多型突然変異型mtDNAを有する細胞を用いた実験により、一部の多型突然変異型mtDNAは細胞の造腫瘍性に影響を及ぼすことが判ってきた。現在、その詳細なメカニズムを検証して論文にまとめている段階である。本研究により、mtDNAの多型突然変異による細胞機能への影響についても新たな関わりを証明できると考えている。
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Research Products
(9 results)