2007 Fiscal Year Annual Research Report
インクルーシブ教育における視覚障害児の教育的ニーズとその支援に関する研究
Project/Area Number |
06J03979
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
宮内 久絵 University of Tsukuba, 大学院・人間総合科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | イギリス / 視覚障害児教育 / 歴史 / 1944年教育法 |
Research Abstract |
イギリスの視覚障害教育は、1980年代にインクルーシブ教育に転換しながらも、従来の視覚障害教育の専門性を積極的に継承し、さらに通常学校においても専門家による支援システムが構築されてきている。 その背景には、歴史的経緯と背景があることが考えられるため、初めて障害児教育を通常教育の枠組みに組み込むなど戦後の特殊教育の枠組みを作った1944年教育法が制定される1940年代に焦点をあて、当時の視覚障害教育の実態について明らかにした。 1944年教育法は、障害児教育は普通教育と本質的には同じものであることを強調する「特別な教育的取り扱い」という概念を導入し、さらに障害児の教育の場について、特殊学校だけでなく通常学校もありうるとした。しかし、とくに特別な指導法を必要とする盲児や重度の弱視児に対しては、基本的に盲学校での教育を推進していたため、視覚障害教育は引き続き盲学校での分離教育が継続された。さらに戦前までは多くが通学制であった盲学校もすべて寄宿制学校として大規模化するといった現象がみられた。その理由と意義について検討した結果、多くの盲学校は、1930年代から40年代にかけて見られた盲児童生徒数の減少と、1944年教育法の教育改革により盲教育と弱視教育が分化したことや、視覚障害以外の教育対象児の爆発的増加によって、廃校に追い込まれたことが明らかになった。そして、廃校を逃れた盲学校は、従来より広範囲の地域からより多くの盲児童生徒を受け入れることが求められたため、すべて大規模な寄宿制盲学校となったのであった。 大規模寄宿制盲学校では、教科教育の拡充と、課外活動の多様化がみられるなど、教育活動の強化がみられた。すなわち、1940年代イギリスにみられた大規模寄宿制盲学校の出現は、盲学校における教育活動を強化し、これまで福祉的要素の強かった視覚障害教育を革新する結果となったことが明らかになった。
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Research Products
(3 results)