2006 Fiscal Year Annual Research Report
インクルーシブ教育における視覚障害児の教育的ニーズとその支援に関する研究
Project/Area Number |
06J03979
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
宮内 久絵 筑波大学, 大学院人間総合科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | イギリス / 視覚障害児教育 / インクルーシブ教育 / 支援システム / バーノン報告書 |
Research Abstract |
研究課題に基づき、次の研究課題を設定した。 研究1:イギリスのインクルーシブ教育における視覚障害児教育の現状と課題 本研究は、イギリスにおける視覚障害児の支援システムの一例として、視覚障害児の支援を専門的かつ積極的に行っているオールドハム地区のサービスセンターOESVIを取り上げた。結果、オールドハム地区での支援が比較的成功している要因として第一に、視覚障害児教育に関する専門知識を有する教員(QTVIやTA)が支援に関わっていること、第二にスタッフの専門性の維持・継承、教材・教具の共有、情報交換等を可能にする十分な施設・設備が整備されていること、第三に以上のシステムを支えるオールドハム地区独自の財政運営の方針が示唆された。 研究2:イギリスの視覚障害児教育の歴史的検討 本研究は、現在の視覚障害児の基盤にあるバーノン報告書(1972年)の内容とその意義について明らかにした。本報告書作成の背景には、視覚障害児の減少、廃校に追い込まれる視覚障害教育学校の存在など、視覚障害教育の存続の危機があった。それらの状況に対応すべく本報告書は、視覚障害児の教育を学校教育の改革に終始させる方向をとらず、就学前から卒業後までの一生涯を通した改革が必要であるという方向性を掲げた。そしてそのために、教育、心理、医療、福祉の専門家及び関係者が集結し実態の分析を行い、当時の視覚障害教育に大きな改革をもたらす抜本的な改革を提言したのであった。バーノン報告書の発行後、改革が全国的に実施されることはなく、イギリスはインクルーシブ教育へと大きな変化をとげた。しかし、バーノン報告書が、視覚障害の特性に立脚し、視覚障害教育の本質的な課題を明らかにしたことから、各方面の活発な議論を経て、視覚障害には視覚障害特有なニーズがあるという共通理解が育っていったことが示唆された。
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Research Products
(1 results)