2006 Fiscal Year Annual Research Report
酸化ストレス応答における転写因子Nrf1とNrf2の機能的協調と差異の解析
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06J03992
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
大辻 摩希子 筑波大学, 大学院人間総合科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 酸化ストレス / Nrf1 / Nrf2 / ARE / EqRE / Cre-loxP / 条件付ノックアウトマウス / 非アルコール性脂肪肝炎 |
Research Abstract |
生物は、酸化ストレスに対し、生体防御遺伝子を発現させ恒常性を維持している。この発現は、抗酸化剤応答配列/親電子性物質応答配列(ARE/EpRE)を介し、CNCファミリーに属する転写因子Nrf2と小Maf群因子のヘテロ2量体により制御されることが示されている。ところで、同じファミリーに属するNrf1はNrf2と分子的に相同性が高く、ともに発現組織・細胞が全身性であることから,Nrf1も同様の機能を有することが予想された。しかし、両因子のノックアウトマウスの表現系は大きく異なる。Nrf2ノックアウトマウスは正常に出生するが、親電子性物質等に対する応答能が著減している。一方、Nrf1ノックアウトマウスは胎児肝臓の傷害による貧血のため胎生致死となる。これまでに、酸化ストレス応答におけるNrf2の重要性は証明されてきたが、成獣でのNrf1の関与は未だ詳細に解析されていない。そこで、本研究ではCre-loxPシステムを用いた条件付きNrf1ノックアウトマウスを作成し、成獣の酸化ストレス応答に対するNrf1とNrf2の生理機能の協調と差異を明らかにすることを目的にする。異物代謝組織である肝臓でのNrf1の機能を解析するために、Albuminプロモーターの制御下にCreリコンビナーゼを発現させ、肝臓特異的にNrf1を欠失したNrf1 cKOマウスの樹立に成功した。このNrf1 cKOマウスでは、肝実質細胞に中滴性脂肪が蓄積しており、NASH(非アルコール性脂肪肝炎)の症状を呈した。これはNrf2ノックアウトマウスでは観察されない表現系である。さらに、同マウスの肝臓を用いてRT-PCR解析を行ったところ、Nrf2の標的遺伝子群の発現には変化は観察されなかったことから、Nrf1とNrf2の標的遺伝子は異なること、また、肝臓におけるNrf1特異機能が存在することが示唆される。そこで、Nrf1の標的遺伝子群を探す目的で、マイクロアレイ解析を実施し、Nrf1 cKOマウスで発現が減少、または増加している遺伝子を同定した。今後、これらの遺伝子について解析を詳細に行う予定である。
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