2006 Fiscal Year Annual Research Report
集団間関係の心理的基盤とその制度的背景:実験及びシミュレーション研究
Project/Area Number |
06J04005
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
品田 瑞穂 北海道大学, 大学院文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 集団間関係 / 利他行動 |
Research Abstract |
本研究の目的は、これまでに明らかにされてきた、集団内の社会的交換における相手からの搾取的行動に対する「恐れ」(他者の協力に対する信頼の欠如)が、集団を超えた交換場面においてどのような役割を果たしているのかを、心理的・制度的側面の両面から検討することにある。従来の実験研究では、社会的交換における非協力行動には、利己主義的動機からの非協力行動と、他者からの非協力行動を予期するために起こる自衛的な非協力行動の2つがあり、後者がより重要な規定因であることが示されている。本研究では、この後者の「恐れから生じる非協力行動」が、集団内よりも集団間で重要な役割を果たすと考え、実際にどのような集団間関係においてこの恐れの効果が見られるのか、またどのような制度的解決が有効であるかを、実験とシミュレーションにより検討することを目的としている。 本年度は、まず、非協力行動を抑制する制度の1つである罰制度に関するこれまでの議論と研究成果をまとめるため、この問題に関する実験研究を、社会心理学・心理学・経済学など幅広い領域にわたって精査し、レビュー論文を英語で執筆している。また、集団間における罰制度の有効性と比較するベースラインとして、集団内における罰制度の有効性を検討する実験を行い、その成果を2つの学会で報告した。これらの成果をもとに、本年度は、集団間において行われる利己的・差別的な非'協力行動に焦点を当て、非協力者に対する報復が起こりやすい条件を特定する質問紙調査を実施した。この結果は来年度行われる国際学会(アジア社会心理学会)で報告する予定である。またこの予備調査の結果をもとに、来年度には実験室実験を用いて実証的検討を行うことを計画している。
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