2007 Fiscal Year Annual Research Report
集団間関係の心理的基盤とその制度的背景:実験及びシミュレーション研究
Project/Area Number |
06J04005
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
品田 瑞穂 Hokkaido University, 大学院・文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 利他行動 / 集団間葛藤 / 社会的ジレンマ / 罰行動 |
Research Abstract |
本研究の目的は、これまでに明らかにされてきた、集団内の社会的交換における相手からの搾取的行動に対する「恐れ」(他者の協力に対する信頼の欠如)が、集団を超えた交換場面においてどのような役割を果たしているのかを、心理的・制度的側面の両面から検討することにある。従来の実験研究では、社会的交換における非協力行動には、利己主義的動機からの非協力行動と、他者からの非協力行動を予期するために起こる自衛的な非協力行動の2つがあり、後者がより重要な規定因であることが示されている。本研究では、この後者の「恐れから生じる非協力行動」が、集団内よりも集団間で重要な役割を果たすと考え、実際にどのような集団間関係においてこの恐れの効果が見られるのか、またどのような制度的解決が有効であるかを、実験とシミュレーションにより検討することを目的としている。 本年度は、集団間における罰制度の有効性と比較するベースラインとして、集団内における罰制度の有効性を検討する実験室実験と質問紙調査を行い、実験と調査による結果の違いを検討した。この成果は国際学会(アジア社会心理学会)と国内学会(日本社会心理学会)の2つの学会で報告した。また、集団内の罰制度の有効性に焦点を当てた研究を2つの学術雑誌に投稿した。これらはそれぞれ審査の後、出版または印刷中となっている。またその成果の一部については国際学会(社会的ジレンマ学会)で発表した。 これらの成果をもとに、来年度は、他者からの搾取に対する「恐れ」が、具体的に他者の持つどのような特徴を手がかりとして生まれるのかをより精緻に検討するため、交換場面や相互作用場面における顔表情などの分析を行い、そこで得られた知見をもとに、シミュレーションのパラメタの選定を行うことを予定している。
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